2021年、ブランド創設100年を迎えたGUCCI。アニバーサリーイヤーの締めくくりにふさわしい、その世界観へと浸ることのできる展覧会「Gucci Garden Archetypes」が東京・天王洲で開催されている。13の部屋からなるエキシビションを、クリエイティブレーベル「PERIMETRON」のプロデューサー佐々木集、映像作家OSRIN、グラフィック&プロップデザイナー森洸大、デジタルアーティスト神戸雄平の4名が巡った。細部にいたるまでブランドの精神が宿った空間の連続。クリエイターならではの視点とともに各部屋の見どころをお伝えします。
展覧会のはじまりは、無数の映像が流れるコントロールルームから。
PERIMETRONと巡る Gucci Garden Archetypes 02

Room 0 Control Room
――先ずみなさんを出迎えたのは、本エキシビションの舞台裏とも言えるコントロールルーム。アレッサンドロ・ミケーレがクリエイティブ・ディレクター就任後に手がけた広告キャンペーンの映像がマルチスクリーンに映し出されています。
OSRIN(以下O) 俺はこの部屋に一番違和感があったんだよね。真っ青だったじゃない?
神戸雄平(以下K) 大きめの扉を開けて、部屋に至るまでのストロークがなかったから、引き込まれるサプライズはあったけどね。イメージしていたグッチにはなかった。
森洸大(以下M) そうだね、一発目でこの感じはなかったね。でも、グッチの映像は一つ一つクオリティが高いから、そこにぼーっと立ってるだけでも時間が経ちそう。
K 操作線出してたよね? あれわざと出してるんだと思うけど。
O あとタイムコードね。TCと呼ばれている、どこからどこまで何秒使っているってコードは、本来なら隠すのに出てた。
K TCって作り手の記録用みたいなものだから、アレッサンドロはじめグッチのコントロール部分を見たというか。
佐々木集(以下S) そういう意味合いだよね。ここから始まる部屋の総評というか、目次みたいな部屋ですよね。
Room 1 Gucci Collectors 2018年秋冬コレクション
――偏執的なコレクターの世界を描いた広告キャンペーンの部屋には、鳩時計154個、蝶3200羽、ぬいぐるみ1800体、そしてグッチの「GGマーモント」バッグ200個が陳列。床も天井も鏡張りで圧倒されました。
O 巧いなと思ったのは、自分たちのバッグを見せる時に、「バックを見せています」としないで、紛れ込ませる点。あくまでもこのコレクターは蝶が好きだし、時計が好きだし、ぬいぐるみが好きだし、グッチが好き、というカジュアルな目線で落とすやり方。
S いろいろなコレクターの中にバッグのコレクターを入れた、みたいなディスプレイの仕方で、上手に落とし込んでたね。
O 俺はラグジュアリーブランドを毎年追いかけるタイプではないし、男性だから、なんであれだけの柄を作るのかわからなかったけど、その理由に説得力があった。
S あったね。男でもワクワクするバッグの見せ方だったよね。
O 普通はショップにあるバッグって、一個一個距離が取られている。それをここまでぎゅっと間隔を詰めて見せるのは、コレクターというコンセプトならでは。
S 俺も自分をコレクターだと思ってるから、気持ちわかるもん。俺はもっと雑多に集めちゃうんだけど。好きなものゾーンを部屋に作って、そこに好きなものだけを置く。
M ここまで大胆でわかりやすいコンセプトを、かっこよくソリッドな空間に仕上げるのは意外と難しい。それがちゃんと伝わってきたね。
O 決めつけてないと思ったのが、時計。全部ショーケースに入れてディスプレイしてもよかったんだけど、時計はあえて掛けるという展示方法がよかった。
K コレクターとインタビュアーが会話するキャプションがあったじゃない? だから、「俺は、時計は並べずに壁に掛ける!」みたいな人間味がある。いい意味で気持ち悪いよね(笑)、そのコンセプトの練り方っていうか。
O 実は簡易的な演出ではないんだよね。通常もっと蛍光色で統一感を出そうと思うじゃん。でも木でも「きれいっしょ」と言えるところがリアルというか。奥に人がいるのを感じる。演出が嘘っぽくないから違和感がある。
K あの時計は全部動くし、全部時間が違うんだよね。
M キャプションにあったコレクターとの会話は演出かな?
S コレクターが実在するのかどうか気になるよね。でもテーマとしてやってるのかもね。
O 日本の水族館で売ってるようなぬいぐるみ絶対あったし! まあ作り方としては、俺らのやり方に似てるよね。概要だけじゃなくてパーソナルなことも考えるというか。
S そこの設計が奥の奥までしっかりされているということかな。
O 絶対コレクターの名前ついてると思うよ、アレッサンドロの中で。
M 地名もついてたしね、オーストリア、ゼメリング峠とか。
O それを考えるのが楽しいんだよね。たとえ外に出さなくても。
S 自由だからね、自分だけだと。
鏡張りの床と天井で、どこまでも続くような空間にてセルフィーを。
Room 2 Of Course A Horse 2020年春夏コレクション
――ピンクの壁面に囲まれた部屋には、グローブを嵌めた多くの手と豊かな髪を持つロボット。ギリシャ人監督、ヨルゴス・ランティモスが撮影したショートフィルムには、馬と人間との夢のような1日が映し出されています。
O 一番ソリッドだったね。
K そうね、抽象的で。
S 全体的に壁を統一している感じが好きだった。絨毯というかフカフカな質感で。それがここのトーンを決めているじゃないけど、壁が違ったらこの空間が別のものに見えそうだし。
O グッチのファッション性が色で出ていた気がするね。白でも全然違うし。俺は神戸っち好きそう、と思ったね。
K すごくCG的だなと思った。このコレクションの映像は馬と人間が仲良いんだけど、馬が水遊びしていて、人間と距離が近いのってあまり見ないじゃない? 振り返ったら馬の成れの果てじゃないけど、モチーフがあって、周りにオブジェクトを集めるというのはデジタルアートによくあるな、と思って。その中のオブジェクトがコレクションの中の一つとは、洒落てるよね。
O 今回の展示は、全体を通してなんとなくわかるのよ。でも、これに関してはなんで馬?他の部屋はもっとヴィジュアルとしてわかりやすかったんだよ、SFとか絵画とかコレクターとか。でもこの部屋は2つ目にして「何これ?」って(笑)
M で、「もちろん、馬」っていうタイトル。
O そうそう(笑)。馬は趣味なんですか? って聞きたくなっちゃう。
――グッチ創設当初から乗馬の世界に着想を得て作ったプロダクトが多いという歴史もありますね。
O ああ、そうか! じゃあ原点回帰ってことか。
Gucci Garden Archetypes展
GUCCI Garden Archetypes展
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PERIMETRON
2013年、音楽家常田大希がYouTubeチャンネルを開設、映像を公開し始める。2016年、プロデューサーの佐々木集と映像作家のOSRINが参加し、クリエイティブレーベルとして始動。グラフィック&プロップデザイナーの森洸大、デジタルアーティスト神戸雄平をはじめ、10名のクリエイターを擁する。King Gnuやmillennium paradeなどのアートワークやMV、ライヴ演出を手がけるほか、多方面との協業も行う。