〈ニューバランス〉の新たな魅力をモデルの小谷実由さんがお届けする新連載。第2回目は、NY発のアパレルブランド〈エメ レオン ドレ〉の創設者であるテディ・サンティスをクリエイティブ・ディレクターに迎え、よりスタイリッシュに生まれ変わった「Made in U.S.A.」コレクションにフォーカス。〈ニューバランス〉本国のグローバルマーケティングマネージャーであるクリスティン・フージェさんと小谷さんによるガールズトークからその全容を紐解きます。
ニューバランス特派員、小谷実由が行くNB探訪記。「新生Made in U.S.A.」編

米国のクラシックなスポーツウエアを新解釈。
伝統にとらわれないユニークなアイデアが満載。
ブランドを象徴する「990」シリーズの発売40周年を記念し、「990v1〜v3」のフットウエアとアパレルから構成される新たな「Made in U.S.A.」コレクションが上陸。〈ニューバランス〉初となるクリエイティブ・ディレクターに就任したテディ・サンティスが手掛けるアイテムは、今後マンスリーで続々と登場していくという。早速その新作をチェックしに、デビューコレクションのために特別に装飾された東京は日本橋浜町の「T-HOUSE New Balance」を訪問。迎えてくれたのは、ZOOMの画面越しから気さくに手を振る本国のグローバルマーケティングマネージャーを担当するクリスティンさん。場所も時間も気にしないニューノーマルなWebインタビューの始まりです。
小谷実由(以下小谷) 今日は新しく生まれ変わった「Made in U.S.A.」コレクションについて聞きたいのですが、まずは以前からある「Made in U.S.A.」のヒストリーなどを教えてください。
クリスティン・フージェ(以下KF) 75年以上にわたってアメリカ国内で製造されている「Made in U.S.A.」は、自国産の比率70%以上のプレミアムコレクションです。アメリカのニューイングランドには、5つもの工場があるんですよ。ボストンに本社を構える〈ニューバランス〉は、もともと1906年に扁平足などを治す矯正靴メーカーとして誕生しました。今ではアスレチックブランドとして、ランニングをはじめ、さまざまなスポーツのフットウエアとアパレルを展開しています。「Made in Asia」の製品の多くは、トレンドに焦点を合わせているのに対し、「Made in U.S.A.」は、クラシックなヘリテージ(遺産)を反映させているのが特徴です。
小谷 2022年のSSより、テディ・サンティスさんが手掛ける「Made in U.S.A.」コレクションがスタートしましたけど、クリエイティブ・ディレクターに彼を選んだ理由はなんだったのでしょう?
KF 〈ニューバランス〉は常に、伝統にとらわれないインディペンデントなクリエイターを求め続けてきました。テディは、2014年にライフスタイルやスポーツを中心としたアパレルブランド〈エメ レオン ドレ〉を立ち上げて、現代のNYで生活する人々の息遣いが聞こえてくるようなアイテムを次々と作り出しています。品質にこだわって、昔ながらの職人技術も大切にする価値観は、〈ニューバランス〉と多くの共通点があるんです。私たちの基盤である「Made in U.S.A.」コレクションの歴史を継承し、同時に彼のユニークな感性やデザインで、さらなる進化をもたらしてくれる。テディのようなクリエイターを起用することは、ブランドの真の表現を可能にしてくれると考えています。
小谷 クリエイティブ・ディレクターを立てることで、ブランドには大きなメリットがあるということですね?
KF そうですね。昔からの顧客だけではなく、新たに若い人たちにも「Made in U.S.A.」コレクションを知ってもらいたくて。テディは、本当の意味でストーリーテリングの重要性を理解していて、〈ニューバランス〉が表現したいことを非常に鋭い視点で言語化・ビジュアル化してくれます。「Made in U.S.A.」のプラットフォームを世界規模で向上させ続けることができる人物なんです。
小谷 ブランドにもいい刺激になっているんですね。では、この新しいコレクションの見どころとは?
KF テディとデザインチームは、とても現代的でありながらもブランドのヘリテージに敬意を表するコレクションを実現させたんです。そちらの「T-HOUSE」にも飾られているけど、ルックブックのキービジュアルに注目してみて。
小谷 すごいカッコいい!スタイリングが新鮮ですね。
KF アパレルとフットウエアが時代を超越する斬新なスタイルで表現されてるでしょ?これまで「Made in U.S.A.」のアパレルにこれほどまで力を注いだことはなかったの。クラシックなスポーツウエアを時代にフィットした、ジェンダーレスなリアルクローズとして提案しています。
小谷 〈ニューバランス〉の中でも特に「Made in U.S.A.」では“ヘリテージ”というものを大切にしているみたいですが、それってどんなものなのでしょうか?
KF ずばり、“品質”だと思います。毎日履きやすいもの、使いやすいもの、長年愛用できるものなど、日々試行錯誤を繰り返して作ってきた品質そのものが“ヘリテージ”とか“クラシック”の部分に繋がると考えています。関わってきた人たちの何十年もの努力が品質であり、ヘリテージであると私は答えたい。今回、そういう価値観を持ち合わせているテディが、クリエイティブ・ディレクターとして加わってくれたのもすごく幸運なことだと思うし、よりそこが強調されるコレクションになりました。
小谷 昔から大切にしているものが積み重なって、新しいスタイルが生まれるんですね。今の話を聞いて、このコレクションにすごく興味が湧きました。私が好きな日本の喫茶店にも通ずる考え方だなと。代々続く伝統やスタイル、そして質を守り続けて新たな歴史を築き上げている喫茶店がたくさんあります。私も、そういうことにすごく感銘を受けるんです。
KF そうそう、もうひとつヘリテージというので思い出しました。それは“タイムレス”だということ。何年も着られる服ってあるでしょ?時代を超えて愛される、流⾏り廃りではない、そういうのもヘリテージだといえるんじゃないかな。知っての通り、「Made in U.S.A.」は価値ある時間と努⼒で品質が作られています。ヘリテージとは?って聞かれたら先ほどの“品質(クオリティ)”と“タイムレス”って答えるかも。
小谷 “タイムレス”は、私もとても好きな⾔葉です。私は大好きな服を選ぶときもずっと着られるかということを考えたり、⼀度好きになったら⻑く好きでいたいなって。できればその⼤事なものを誰かに受け継いでほしいと思う。古着も好きなので、祖母が若い頃着ていた服とかもよく着るんです。そういう考え方はきっと〈ニューバランス〉のモノづくりに通じていると思います。
小谷 「990」シリーズは、このグレーがクラシックなカラーですよね?ワンポイントでベージュが入っていて、このコンビネーションがすごくかわいい。これはテディさんのアイデアですか?
KF 今回作られた「990v1、v2、v3」は、U.S.A.スタイルで作られた最初の「996」に触発されたと聞いています。当時の色がちょっとベージュがかっていたことへのオマージュで。ヘリテージデザインやモデルのレガシーなど、古いものと新しいものを少しずつ取り入れているんです。ファーストコレクションは、「990」を象徴するようなもので始めたかったから、〈ニューバランス〉にとって特別なグレーとヘリテージの「990」シリーズから着想を得たカラーリングで仕上げられているんですよ。
KF 実由さんは、今回のコレクションでどのアイテムが気に入った?
小谷 私は、このオフホワイトのフーディと「990v2」がお気に入り。特にこの毛羽立ったグレーのスウェードが一緒に暮らしている猫(しらす)みたいでかわいい!クリスティンさんはどれが好きですか?
KF 私もその「990v2」は大好き。実は、今年の夏にオレンジカラーが出る予定なんです。本当に綺麗なカラーリングで、見た目もポップでかわいいんですよ。
小谷 オレンジの「990」!楽しみですね。日本の女の子におすすめのアイテムとかコーディネートはありますか?
KF 今、実由さんが手に持っているフーディもおすすめだし、クルーネックスウェットもいいね。ボリュームのあるパンツにクルーネックスウェットやそのフーディをオーバーサイズで着るのがTOKYO GIRLにはかわいいと思う。足元は、「990v2」か「990v3」が合うんじゃないかな。
小谷 アメリカではオーバーサイズが流行っているんですか?
KF そう、まさにオーバーサイズがトレンド。今アメリカの女の子には、メンズの服をちょっと大きめに着るのが流行っていてるかな。私は、メンズのパンツが好きでよく穿いているんだけど、それをカジュアルに合わせます。たとえば、実由さんが今持っているフーディをたすき掛けするみたいに斜めに結んでみたりね。
小谷 それ、絶対かわいいい!私もメンズの服をよく着るのでやってみたいです!そうだ、せっかくだから、ここにある服を使ってコーディネート組んでみたいんですけど、クリスティンさんに見てもらってもいいですか?
KF もちろんOK!
KF わ!素敵。デニムの折り返しているところが特に好きかも。今履いている「990 v1」は、他のモデルと比べてちょっと細⾝だから、そのデニムとの相性抜群ですね。パンツスタイルもかわいいけど、ドレスとかスカートとかもにも似合うと思う。あと、スカーフのバランスがすごくいいですね。
小谷 嬉しい。ありがとう。スカーフは胸元の赤いロゴを意識した色合わせをしてみました。
KF アメリカの星条旗みたい。東京の女の子はやっぱりお洒落ね。東京には行ったことがないんだけど、日本が大好きだし、今度ぜひ行ってみたいです。ちなみに今のトレンドが知りたいんだけど、春から夏にかけて季節が変わっていく今ぐらいの時期は、みんなどんな格好をしているの?実由さんが今日着ていたグリーンの服はすごくかわいいけど、周りの子はどんなものを着ているのか気になるな。
小谷 季節の狭間は、さっき着ていたシースルーのトップスをよく着ているかも。あのグリーンのワンピースは、夏物なんだけど、サイドが大きく開いているので夏になったらワンピース1枚での着こなしに挑戦してみようかなって。
KF あのシースルーめちゃくちゃかわいい。東京ではグリーンが流行っているんですか?
小谷 流行ってますね。グリーンは個人的にも大好きなカラーなんだけど、実は今日ここにいるガールズ・スタッフみんな、緑のアイテムを身に着けてます(笑)。
KF 実は私もグリーンのアイテム今日持ってるの(バッグなどいくつかアイテムを見せながら)!じゃあ、日本に行くときはグリーンの服を着ていくようにしなきゃね。
今日のみちくさ
「実は日本橋にある百貨店に母が務めていたこともあって、このあたりは、小さい頃から馴染みのあるエリアなんです。最近の印象より子供のころの記憶がすごく鮮明なんですよね。ここ『TOYO』は存在はもちろん知っていましたし、気になっていたけど、割と最近まで入ったことがなかったんです。去年初めて訪れたときに喫茶店のつもりで知らずに2Fのレストランフロアへ行ったんです。ちょうどお昼どきだったのでそこでランチを済ませて、そのあとケーキが食べたくなったんですけど、1Fの喫茶店スペースじゃないと食べられないと言われて、下に降りてハシゴしました(笑)。新しいのか古いのかわからない、そんな空間が面白くて好きなんです」(小谷さん)
INFOMATION
🗣️
小谷実由
ファッション誌やカタログ・広告を中心に、モデル業や執筆業で活躍。一方で、様々な作家やクリエーターたちとの企画にも取り組む。昭和と純喫茶をこよなく愛する。愛称はおみゆ。
Instagram: @omiyuno