多ジャンルの“洗練”や“先端”が集う表参道、それは建築でも同じ。その代表格である「プラダ 青山店」を訪ねます。15年以上を経てなお、とびきりかっこいい!
表参道で別格の存在感を放ち続ける、プラダ青山店:東京ケンチク物語vol.8

PRADA AOYAMA
表参道は、実は現代建築のちょっとしたショーケース。安藤忠雄、槇文彦、伊東豊雄、MVRDV、隈研吾、SANAA……。交差点付近をちょっと歩くだけで、国内外の名だたる建築家たちの手がけた建物がいくつも見つかる。今回訪ねる「プラダ 青山店」は、なかでも格別の存在感を放つ会心の一作だ。交差点から麻布の方へ少し行った先に現れる、巨大なクリスタルのような建物。ところどころに凹凸のある菱形のガラスが積み上がって空へ伸びていくさまに、誰だって目が釘付けになるだろう。設計はヘルツォーク&ド・ムーロン。ロンドンの美術館「テート・モダン」や北京オリンピックのメインスタジアム〝鳥の巣〟などがよく知られる、スイスを代表する建築家ユニットだ。
地下2階、地上7階(ショップエリアは地下1階から4階)の空間に、メンズ、ウィメンズのほぼすべてのコレクションがそろう、国内最大級のストアであるこちら。外から見ても中に入っても、見慣れた四角い箱のようなビルとは違いすぎていて、どういう形をした建物なのか、一見しただけではよくわからない。だから建築家がかなりエモーショナルに作ったかのように思いそうだが、実はまったく逆。建物のおおよその形や大きさは、土地や用途によって細かく設定されている法規で決めたそう。かくして、建物は上に向かって細くなる五角形の塔のような形に。表側には約840枚(!)の特注のガラスを貼りめぐらせた。さらに建物を成り立たせる「構造」が、この建築は非常に複雑。エレベーターが収まる2本の柱、内部をフィッティングなどにも使っている水平方向のチューブ、ガラスをはめ込む斜め方向の鉄筋。絶妙のバランスで成り立ちながら、構造体もそれぞれに機能を果たしている。飛び抜けて美しく機能的で、唯一無二。ブランド自身にも通じる哲学を貫いた名建築が、誰もがショッピングに集う表参道にあるなんて、やっぱり東京は楽しい。
ところでこちらの建物、完成は2003年だから築15年以上。それでいてガラス面も、ほぼ白で統一されたインテリアも、一点の曇りもない美しさなのには感服してしまう。愛されながらずっとあり続けてほしい、東京のランドマークだ。