多様なフォルムと色彩を身体の一部のように自在にまとう。 “今”を真っ直ぐ見つめる瞳の輝きが人々を惹きつける。
眞栄田郷敦 光と色が満ちる人

「今日はどんなふうに撮りますか?テーマは何ですか?」「ヘアはもっと世界観に合うものもありそうですよね?」
撮影の間、スタッフの中に自然に溶け込んでイメージを確認し、意見を述べる。あくまで控えめに、礼儀正しく。“一緒に作りたい”という前向きな意思が伝わってきて、周囲の心を一気につかんでしまうのだ。テイストもさまざまな5ブランドのルックをサラリと完璧に着こなし、ファッションへの関心の高さも感じられた。
「実は、流行にはけっこう無頓着で。ラクな服が好きで、色も黒ばかり。数もかなり少なくて、ダウンもコートも1枚ずつ。でも、気に入って手に入れたその一着を大事にしたい、というのがあえて言えばこだわりかな」
クラシカルなアイテムのチョイスと意外性のある組み合わせが印象的な今シーズンの〈プラダ〉。レザーベストの上にチェックのアウターを重ねて。ブルゾンのギンガムチェックは50〜60sのイタリアの家庭に見られた壁紙やテーブルクロスからのインスピレーション。コットンナイロンのコート ¥445,500、ブルゾン ¥330,000、レザーベスト ¥495,000、パンツ ¥170,500*すべて予定価格(以上プラダ | プラダ クライアントサービス)
穏やかな休日を描いたバカンスのエスプリ漂うコレクション。「メロン」と名付けられた色彩のタートルネックとニットシャツは共にカシミヤシルク素材。波からインスパイアされたモチーフがグラデーションで配されている。コットンサージのリラックスしたはき心地のパンツと合わせて。ニットシャツ ¥343,200、タートルネック半袖ニット ¥270,600、パンツ ¥152,900、ネックレス ¥90,200、ブレスレット ¥216,700(以上エルメス | エルメスジャポン)
“自分の中の流行”ではないが、今熱心に取り組んでいることについて問いかけると、気持ちいいほどに即答。
「一回きりの人生を楽しむ、ですかね。それは仕事に限らず。中途半端にはなりたくないので、全部全力で向き合いたい。負けず嫌いで、手を抜かずにやり切るのは子どもの頃からです」
父・千葉真一と兄・新田真剣佑の背中を見て育ってきた。
「父からは『何をやるにしてもテッペンを目指せ!』と言われていました。一番になれなかったとしても、そのための努力をするべきだと。二人がいなければ俳優に憧れを抱くこともなかったと思う。高校卒業の頃に兄の映画を観て、自分が知らない兄がいると感じて、役者さんってすごいなって。大きな夢のある仕事だなと思いました。僕が足を踏み入れていい世界ではないと躊躇していた部分もあったんですけど」
ベーシックなアイテムを重ねたり、異素材の組み合わせによるスーパールーズなシルエットが魅力の〈バレンシアガ〉。コットンツイルのトレンチは内側にネイビーコートとスウェットフードが取り付けられたオールインタイプ。バギーパンツはデニムとスウェットを前後で切り替えたデザイン。トレンチコート ¥940,500、タンクトップ ¥86,900*参考価格、パンツ ¥313,500、スニーカー ¥165,000(以上バレンシアガ | バレンシアガ クライアントサービス)
郷敦さんをさらに“人気者”にしたのが昨年放送されたドラマ『エルピス —希望、あるいは災い—』。多くの視聴者の心に響く演技で、その存在感が鮮明になった。彼には仕事に臨むにあたって、ひとつのルールがあるという。 「とにかく、妥協しない。現場が本当に好きで、人と人が集まっていろんなものを共有しながら作っていく。そのためには理想や目標を持って、いい意味でぶつかりながら進んでいくのが何より楽しいし、やりがいがあります。今日もそれぞれの服をどうきれいに見せるかを考えたり、ポーズや表現でベストなものを出すためにスタッフさんの意向を共有してもらって。皆さんプロなので意見を言うかどうかは悩むところですけど、充実した時間でした」
では、実際に演じる際に心がけていることはなんだろう。
「役の魅力を存分に表現する。それが現段階では大事かなって思っています。僕を選んでいただいた限り、予想を超えていきたい。この仕事を始めて4年経つのですが、時代物は今の大河ドラマが初めて。経験が足りないなと日々感じています。まだまだ修行の身です」
ゆっくりと言葉を選びながら、小さな声でとつとつと語る。瞳を輝かせて、ときおり屈託のない笑顔がのぞく。
「自分は慎重だけど、意外と楽観的(笑)。新しい何かを始めるのはすごく怖い、自信がないんです。今回の時代劇も最初は不安で、準備も丁寧にしました。戦国武将についても勉強したのですが、知れば知るほど面白いし、深い。石橋を叩いて渡るって言うんですか?一歩一歩。でもどこかで、目の前のことを全力でやっていれば、将来につながって、どうにかなるんじゃないかなと思っている自分もいます」
流されず、そして構えずに己を貫く姿勢が清々しい。
「でも、人間関係ではときには妥協も必要(笑)。独りよがりにならないようにしたいですね」
拡大した遊び場をテーマにした会場で発表されたコレクション。ワイドショルダーとラップ構造のデザインが特徴のジャケット、裾にファスナー付きのスリットを入れたテーラードパンツ。個性的なセットアップを甘いライラックカラーで仕上げたインパクトのある一着。ジャケット ¥542,300、共地のパンツ ¥192,500、ポインテッドカラーのシャツ ¥138,600、リング ¥80,300、スニーカー ¥177,100(以上ルイ・ヴィトン | ルイ・ヴィトン クライアントサービス)
ガーデニングやフィッシングなどアウトドアウェアのデザインにクチュールメゾンならではの繊細な手仕事を落とし込む。スポーティなナイロンのプルオーバーは、メッシュポケットの内側にムッシュ ディオールが愛したスズランモチーフのビーズ刺繡が施されている。ショートパンツはクラシカルなストライプ。プルオーバー ¥440,000、ショートパンツ ¥190,000、ネックレス ¥325,000、リング ¥66,000(以上ディオール | クリスチャン ディオール)
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眞栄田郷敦
2000年、アメリカ・ロサンゼルス生まれ。19年、映画『小さな恋のうた』で俳優デビュー。NHK大河ドラマ『どうする家康』に武田勝頼役で出演。『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』が4月21日公開予定。