クォーター・ライフ・クライシス。それは、人生の4分の1を過ぎた20代後半〜30代前半のころに訪れがちな、幸福の低迷期を表す言葉だ。家入レオさんもそれを実感し、揺らいでいる。「自分をごまかさないで、正直に生きたい」家入さん自身が今感じる心の内面を丁寧にすくった連載エッセイ。前回は、vol.96 曖昧な境界線。ニューアルバムについてのインタビューはこちら。
家入レオ「言葉は目に見えないファッション」vol.97
岡山制作合宿

vol.97 岡山制作合宿
「えー、じゃあ広島公演の後に岡山に寄って制作合宿するってどうですか?」そう事務所の会議室で発言した数ヶ月前。駄目で元々、言うだけ無料(タダ)、と思い切った私に「あー良いんじゃない?」と何ら変わらぬトーンで返す社長。横の席で頷くマネージャー氏。なんだか出会った事がない場面すぎて、これは面白い方向に進んでいきそうだ、と胸が踊った。
「キャッチーなメロなんだよね」とオススメされて以来、何度も再生したアルバム。バラエティに富みながらオリジナリティもあり、不思議な後味を残す人だと思った。知ってるのに、なんか新しい、みたいな魔法。そして、もし叶うなら一緒に曲が作ってみたい、と。そんな想いを抱いたのも束の間。その方が岡山在住のアーティストだと聞き、数秒沈黙した後、いや私が会いに行けばいいんだ、と顔を上げた。シンプルな事だ。良い作品を作りたい。作れる可能性が1%でもあるなら、行くべきでトライすべきだ。だけど、そんなひょんな提案をマネージャーである彼女や社長はなんて言うかなーと想像して、でもまず伝えてみようと言う結論に至ったのだけど、そんな内省は面白いくらいに杞憂に終わった。私の想いに耳を傾けた彼女が「行きましょう!」と笑ってくれた表情や仕草、背景、空気の震えまでを忘れずにいれたら良いなと思った。そして一緒になって面白がってくれたことが何よりも嬉しかった。岡山出身である彼女のご実家にお世話になることになったのだけど、そんな事が人生で起こると思っていなくて、こういう予想外は人生に何度も起こって欲しい!と思っていたら、広島公演の後に都内で仕事が入り帰京しなくてならないスケジュールに。すごく嬉しいのだけど複雑…と意気消沈。マネージャーの彼女とよーし!もう腹を決めて、日を改め行っちゃいましょうかー!と。変なテンションで、女子2人わーきゃー計画を立てながら、出会えて良かったなーとしみじみした。
そして無事、岡山に行く事ができ、曲も作れた。マネージャーの実家にお世話になる、なんて予想外な出来事も、見聞きした全てが新鮮で珍しかった。私の宿泊を受け入れてくださったご家族の皆さん本当にありがとうございました。制作の為に予定を開けてくれたアーティストの方にもスペシャルなハグを!物語を面白くして行くのはいつだって、自分自身。そして周りにいてくれるあなたであり君。全てに感謝したい!とピースふるな気持ちをプレゼントしてくれた岡山制作合宿の旅。
Text:Leo Ieiri Illustration:chii yasui