独断と偏見で選ぶ国内外のマニアックな雑誌に特化したオンラインストア「Magazine isn’t dead. 」を主宰する高山かおりさん。世界中で見つけた雑誌やZINEから、毎月お気に入りの1冊を紹介します。前回紹介したZINEは『counterpoint』。
一人の編集者が仕掛ける、ファッション誌という挑戦『VOSTOK』Magazine isn’t dead Vol.6
今年の3月、ひとつのファッション・カルチャー誌が創刊した。その名も『VOSTOK(ヴォストーク)』。極東という意味を持ち、ガガーリンを乗せて人類初の宇宙飛行を実現した宇宙船の名前でもある。
編集長の大城壮平さんは、沖縄・宮古島出身。雑誌好きが高じて大学時代に『HUgE』編集部にアルバイトとして飛び込む。当時の編集長は、現在の『Them magazine』編集長の右近亨さん。その後、右近さんについていく形で『Them magazine』の編集者として創刊時から携わり2018年11月に独立。雑誌をつくろうと思って独立した訳ではなかったそうだが、1カ月間雑誌から離れたことが10年以上なかったことから「雑誌をつくりたい」との思いを強くした。なんだかロマンティックな話ではないか。
新雑誌創刊を決意したのは12月。なんと発売3か月前のことで、編集部は大城さんたった一人。まず始めたことは、メゾンブランドへの交渉だ。1カ月以上を費やしながら、同時進行で写真家やスタイリストなどに声をかけコンテンツをつくっていったという。
ファッションストーリーでは、ホンマタカシや岡本充男、奥山由之といったGINZA読者におなじみの写真家から、河野幸人や当山礼子などの若手も参加。大城さんと同郷で先輩でもある「クードス」のデザイナー・工藤司はスタイリングと写真を手掛けている。映像作家で詩人のジョナス・メカスの追悼記事や“ヒップホップが流行らない日本の「天才」信仰”と題した1991年生まれの村上由鶴によるテキストも面白い。ファッションもジャーナルも第一線で活躍し続ける大御所から気鋭の若手たちまで、偏りがない人選がまさに“雑”誌らしい。
いち若手編集者の雑誌づくりへのひたむきな思いが動かした多くのクリエイターたち。各々が雑誌という制約の中で自由に表現する楽しさに溢れているようにみえる。裏表紙は、〈C.E〉が今号のために特別に制作したビジュアルだ。
次号は9月の発売を予定。雑誌は続けていくからこそ、面白くなる媒体なのだと私は思う。と同時に、自費出版だからこそ続けることはとても難しい。大城さんの挑戦は始まったばかりだ。
『VOSTOK』はこちらで販売しています。
この連載では、ginzamag.com読者の手作りZINEを募集しています。決まりがなく、自分を自由に表現できるのがZINEの魅力。オンラインストア「Magazine isn’t dead. 」の高山かおりさんに、自分のZINEを見てほしい!という読者のみなさま。ぜひGINZA編集部まで送ってくださいね。
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高山かおり
独断と偏見で選ぶ国内外のマニアックな雑誌に特化したオンラインストア、Magazine isn’t dead. 主宰。本業は、東京と甲府の2拠点で活動するライター、編集者。生まれも育ちも北海道。セレクトショップ「aquagirl」で5年間販売員として勤務後都内書店へ転職し、6年間雑誌担当を務め独立。4歳からの雑誌好きで、国内外の雑誌やZINEなどのあらゆる紙ものをディグるのがライフワーク。「15号目まで出ているリトルプレス『金沢民景』がずっと気になっています。サブタイトルに『金沢の路上で見つけた』と付き、小屋根、風除室、カーポートなど視点の鋭さが光っています。いつか制作者の方に話を聞いてみたいです」