元エース刑事の藤(戸田恵梨香)と新米警察官の川合(永野芽郁)の奮闘を描く『ハコヅメ〜たたかう!交番女子〜』(日本テレビ、毎週水曜)。永野芽郁の新型コロナウイルス感染が心配される中、本編を4話で中断し、先週から2週にわたり「特別編」を放送している。5話放送も待ち遠しいけれど、「特別編」には『ハコヅメ』の魅力の真髄があった! とドラマを愛するライター、釣木文恵が見どころを振り返ります。
特別編で発見した『ハコヅメ』の魅力。引き算の演技、ほどよい日常が心地よい

特別編で描かれた『ハコヅメ』の真髄
先週放送分で「特別編」として、町山署刑事課のある一日を描いた新撮部分を織り交ぜ1、2話を振り返った『ハコヅメ』。女性から飲みの誘いが来た源(三浦翔平)、限定フィギュアが欲しい牧高(西野七瀬)、牧高を猫カフェに誘いたい鈴木(渕野右登)、部下たちと飲みに行きたい北条(平山祐介)がそれぞれ定時を目指して仕事に勤しむが、結局は管内で事件が発生し、全員駆り出されてしまうというものだった。
おそらくは急遽の対応だっただろうこの新撮部分にこそ、『ハコヅメ』の思想が詰まっている。
登場人物たちのリアルな温度感
『ハコヅメ』は、これまでにないほど警察官たちの日常にクローズアップしているドラマだ。はじめに事件があってそれに対応するために彼らがいるのではなく、繰り返す日々の中で事件が起こり、彼らは業務として事件に取り組む。だから事件とは関係ない点検の風景も描かれるし、事件の展開よりも、それによって彼らが家に帰れないことの方が描写される。
このドラマに登場する警察官は、私たちと同じようにその職業ならではのたいへんさとか、組織ならではの面倒さとか、そんなことの中で仕事をしている。だから私たちは共感する。
登場する人物はいずれも癖の強いキャラクターでありながら、大袈裟な演技や変顔などに頼ることなく、どこまでもリアルな温度感なのも観ていて心地いい。
たとえばこれまで二枚目を演じる機会が多かった三浦翔平が、同期の藤(戸田恵梨香)にからかわれる、どうにも冴えない源を過不足なく見事に演じている。山田(山田裕貴)の後輩キャラの温度感も絶妙だ。サボることだけを考えているように見えて、その実川合や藤のことを理解する伊賀崎所長を演じる、ムロツヨシのいつもより引いた演技が光る。
藤と川合の二人は、時々ちょっと極端なところも時々挟まれる(4話の、刑事課の独特なニオイを感じないよう口で息をしながらしゃべるシーンの変な喋り方とか!)けれども、それがなんだか受け入れられてしまうだけの魅力がこのペアにはある。
ラストでチラリと触れられる藤の秘密
新撮部分の「早く帰りたい、でも急ぎの仕事が来ちゃってうまくいかない」という、働いている人間なら誰もが体験したことのありそうなエピソードは、まさに『ハコヅメ』の芯の部分だろう。彼らの定時退勤をダメにした事件自体が一切描かれないのも、実際には撮影の難しさなどの理由もあったかもしれないが、このドラマにおいては圧倒的に正しい。
さて、先週のラストでは、藤が刑事課から異動した理由について、同期の源が薄々勘づいていることが描かれた。日常に横たわる藤の秘密は、彼らにどんな影響を与えるのだろう。
脚本: 根本ノンジ
演出: 南雲聖一、丸谷俊平、伊藤彰記
出演: 戸田恵梨香、永野芽郁、三浦翔平、山田裕貴、西野七瀬 他主題歌: milet「Ordinary days」
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Writer 釣木文恵
ライター。名古屋出身。演劇、お笑いなどを中心にインタビューやレビューを執筆。
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Illustrator たけだあや
イラストレーター、ときどき粘土作家。趣味の多い京都府出身。
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