Installation view of the exhibition “Spektrum,” 2024
© Isabelle Arthuis / Courtesy of Fondation d’entreprise Hermès
「銀座メゾンエルメス フォーラム」にて、展覧会『スペクトラム スペクトラム』が開かれる。ベルリン拠点のエマニュエル・カステランはじめ7名の美術家の作品が集い、一つの小説のように物語を感じさせながら幻想的な空間を広げていく。2025年3月20日(木)から6月29日(日)まで。
🎨CULTURE
7人のアーティストが織りなすナラティブ
「銀座メゾンエルメス フォーラム」にてグループ展が開催
ドイツ語の「スペクトラム」とは、物理的な現象の分布や範囲(光学や音響のスペクトルなど）を表すと同時に、「亡霊」や「幻視」といった意味も持つ。また、比喩的に扇子を指すこともある、広い射程を持つ言葉だ。
本展『スペクトラム スペクトラム』は、2024年にブリュッセルで開催されたエマニュエル・カステランの個展が拡張したもの。別々の年代に生まれた作品同士が共鳴し、あらゆる境界を越え、反射し合っていく。幻想的な趣の絵画やインスタレーションからなる展覧会は一つの物語を紡ぎ出し、鑑賞者は真実と虚構の間にたゆたうこととなる。
フランス生まれで、現在ベルリンを拠点とするエマニュエル・カステラン。モンタージュを思わせる切り込みのあるキャンバスに人物像を描く。Emmanuelle Castellan | morning hope | 2024 | Courtesy of the artist
© Emmanuelle Castellan
同じくカステランの作品。ヌーヴォー・ロマンに影響を受けた作品は、幽玄で有機的。Emmanuelle Castellan | double | 2024 | Courtesy of the artist
© Emmanuelle Castellan
題府基之は1985年東京都生まれ。身の回りの瞬間を捉えた写真は、普遍的な日常や風景がはらむ非日常性を露わにする。題府基之 | Untitled (Pee) | 2021 | Courtesy of the artist and MISAKO & ROSEN
©Motoyuki Daifu
岐阜県を拠点とする川端健太郎は、自然の自己生成と再生に着想して磁器制作を続ける。 Kawabata | Batista 2 | 2020 | Courtesy of the artist and Nonaka-Hill
©Kentaro Kawabata
一種の視覚的な詩ともいえるヴァルター・スウェネンの絵画。作家は1946年ブリュッセル生まれで現在も同地で活動している。Walter Swennen | West-Mest | 2015 | Collection of Carole Vanderlinden / Courtesy of the artist and Xavier Hufkens
© HV-Studio
粘土そのものの物質性を追求するのは、ドイツ出身のヨハネス・ナ―ゲル。陶芸をフォルムとコンセプトの両面から揺るがし、特にその彫刻的な可能性を起点に、器のあり方を解体する。Johannes Nagel | movement/ cut #10 | 2024 | Courtesy of the artist and Galerie Zink
©Tom Dachs
津田道子は1980年神奈川生まれ。インスタレーションや映像、パフォーマンスなどで、不可視の存在を示唆する作品を制作する。津田道子 | 《あなたは、その後彼らに会いに向こうに行っていたでしょう。》| 2019 |「あいちトリエンナーレ2019 情の時代」展示風景（伊藤家住宅）| Courtesy of the artist and TARO NASU
© Hirabayashi Takeshi
カステランのブリュッセルでの展示風景。Installation view of the exhibition “Spektrum,”
© Isabelle Arthuis / Courtesy of Fondation d’entreprise Hermès
本展では、20世紀前半に詩情豊かな独自のスタイルで活躍した画家マリー・ローランサンの作品も展示される。輝くようなパステルの色彩が他6名の作品と響き合う。
加速する情報化社会のなかで、いっとき事実や真実という区切りを大胆に越える。そんな機会を与えてくれる空間が、展示会場には広がっている。
ℹ️
『スペクトラム スペクトラム Spektrum Spektrum』
会期＿2025年3月20日(木)～6月29日(日)
時間＿11:00〜19:00(入場は〜18:30)
会場＿銀座メゾンエルメス フォーラム 8・9階
住所＿東京都中央区銀座5-4-1
休館日＿水曜
Tel_03-3569-3300
Text_Motoko KUROKI
