父を殺された娘・心麦(広瀬すず)が、弁護士・松風(松山ケンイチ)とともに真実を追求する。しかし、新たな事実が次々発覚し、関係者が不審な死を遂げ……『クジャクのダンス、誰が見た?』(3月28日最終回10話放送)後半をドラマを愛するライター・釣木文恵が振り返ります。レビュー前編(5話まで)はこちら。
*レビューはネタバレを含みます。
血の繋がりだけではない父娘の信頼関係が描かれていた
父を殺された娘・心麦(広瀬すず)が、弁護士・松風(松山ケンイチ)とともに真実を追求する。しかし、新たな事実が次々発覚し、関係者が不審な死を遂げ……『クジャクのダンス、誰が見た?』(3月28日最終回10話放送)後半をドラマを愛するライター・釣木文恵が振り返ります。レビュー前編(5話まで)はこちら。
*レビューはネタバレを含みます。
『クジャクのダンス、誰が見た?』が最終回を迎えた。平凡ながら仲睦まじく生きてきた父娘に突然悲劇が訪れた1話冒頭。そこから最終話まで、遺された娘・心麦(広瀬すず)には衝撃的なできごとが次々と起きた。それでも父・春生(リリー・フランキー)の死の真相を知るために、彼女は進み続けた。
結論からいえば、幼い頃から心麦一家と家族ぐるみでつきあいがあり、心麦が第二の母と慕っていた「京子さん」(西田尚美)が父を殺害した犯人であり、そして心麦を生んだ母でもあった。心麦にとって、これ以上なくひどい結末といえる。ただでさえ父を殺され、家まで焼かれた彼女はまだ大学生。父が遺した手紙さえも真偽が疑われ、父の部下・赤沢(藤本隆宏)やラーメン屋のおじさん・染田(酒井敏也)ら、これまで味方だと思っていた周りの人々のことも、誰を信じていいのかわからなくなる。挙句の果てに自分自身が、実は22年前に起きた一家惨殺事件の唯一の生き残り・林川歌であることも明らかになる。いままさに死の真相を追っているその父と血がつながっていない、自分が実は認識している自分とは別人であるという事実はアイデンティティの根幹を揺るがすもの。今並べたどれか一つのできごとをとっても、心折れるのに充分過ぎるほどだ。
けれど、彼女は立ち止まらない。真実を知ることがよりつらくなる道だとしても、「進みましょう」と言い続ける。そして、何も確実なことがない彼女の世界にあって、たった一人、父を信じる。父の遺した手紙のことだけを揺るぎなく信じる。根拠らしい根拠はない。ただ父と一緒に過ごした時間、その思い出だけが、彼女を前に進める。
実の母であった京子は、「みんな私の邪魔をする」と言いながら罪を重ねていった。けれど、心麦はどんな目に遭っても誰かのせいにしたり、自暴自棄になったりしなかった。その真実だけを求めて「まっとうに」居続ける精神は、父との暮らしの中で育まれていったものだろう。このドラマには、血の繋がりだけではない父娘の信頼関係が描かれていた。
Edit_Yukiko Arai