広瀬すずと松山ケンイチが事件の被害者遺族と弁護士として大きな謎に迫る『クジャクのダンス、誰が見た?』(1月24日スタート、TBS 毎週金曜よる10時〜)をドラマを愛するライター・釣木文恵が振り返ります。*レビューはネタバレを含みます。
幼さや危うさを残しながらも強い思いをもった主役にぴったりの広瀬すず
広瀬すずと松山ケンイチが事件の被害者遺族と弁護士として大きな謎に迫る『クジャクのダンス、誰が見た?』(1月24日スタート、TBS 毎週金曜よる10時〜)をドラマを愛するライター・釣木文恵が振り返ります。*レビューはネタバレを含みます。
謎も、怪しい人も多すぎる。
『クジャクのダンス、誰が見た?』は元警察官の父・山下春生(リリー・フランキー)を殺害された娘・山下心麦(広瀬すず)が、遺された一通の手紙をもとに、父殺害の犯人や父が過去に携わった事件との関係を探っていく物語。父からの手紙に名前が書かれていた弁護士・松風義輝(松山ケンイチ)は、心麦とともに謎を追う。
ひとことで言えばサスペンスものなのだが、それにしたって最初からあまりにも謎が多すぎる。まず、容疑者として逮捕された遠藤友哉(成田凌)は、かつて資産家一家6人が殺害された「東賀山事件」の犯人である遠藤力郎(酒向芳)の息子。いまは死刑囚として服役している力郎を当時逮捕したのが春生だったのだ。が、春生が心麦に遺した手紙には彼を含む複数人の名前が書かれ、その人たちが逮捕された場合は冤罪であると明記されていた。この時点で一筋縄ではいかない。
怪しい人物はわんさかいる。たとえば、春生と心麦が通っていたラーメン屋台の店主・染田進(酒井敏也)。彼は春生の死後、春生が遺した手紙と弁護士費用300万円を心麦に渡すという大きな役割を担っていた。4話では、かつて薬物乱用と偽ブランド品、サイン等の偽造という罪を犯していたことも明かされる。春生の見守りもあり、ラーメン屋として再出発した染田。しかし、(5話の時点では)顔が明かされない誰かの指示によって春生の監視のようなことをしていたほか、4話では警察に春生の遺した手紙を偽造していたと供述。その供述は嘘だと心麦に告白した矢先、命を落としてしまう。
週刊誌記者の神井孝(磯村勇斗)は、何かと心麦たちを追い詰めるような言動を繰り返すが、一方で友哉からは信頼を置かれており、かつて春生が友哉に会って「東賀山事件には別に犯人がいる」と報告、謝罪する場に立ち会ってもいる。
心麦一家と昔から家族ぐるみの付き合いをしてきた春生の部下・赤沢守(藤本隆宏)。友哉を犯人と信じる彼は、父の手紙の内容から友哉は無実だと信じ、遺されたお金で松風を友哉の弁護人に立てた心麦とは対立する立場になってしまう。父、手紙、染田、松風。心麦が信じるものすべてに疑いの目を向けている。何かとあえて部下・秋貞隆雄(紘瀬聡一)に意見を言わせる振る舞いも気になる。
早くに母を亡くして父と二人暮らしの時期が長かったせいか、心麦は大学生でありながら父とラーメンを食べる時間を楽しみにするほど仲がよく、それだけに父の死には大きなショックを受けている。松風からたびたび勝手な行動を慎むよう言われても、どんどん一人で動いてしまい、結果嫌な目に遭ったり悲しい思いをしたりしている。けれど、その気持ちもわからないではない。大切な家族と家を失くして孤独の身になった上、父の死には謎があり、さらに遺された手紙さえ偽物の可能性が出てきた。昔から馴染みだったラーメン屋のおじさんも、家族ぐるみのつきあいをしていた人も、どこまで信じていいかわからなくなった。さらには自分が父の娘ではない疑いまででてきて、自身のアイデンティティまでぐらんぐらんにゆるがされている。そんな不安定な中で、心麦は「ジャングルで踊るクジャク」=「真実」を求め続けているのだ。
Edit_Yukiko Arai