日進月歩の進化を、それぞれの表現方法において独自に繰り広げ続ける漫画とアニメ。では、スポーツを題材にした作品は今、どうなっているのか。二人の識者が語り明かす。
スポーツ漫画、アニメはどこに向かうのか?
切り取る漫画、動かすアニメ
比較で見える両者の成長
南信長(以下南) スポーツ漫画の歴史は、ざっくり10年ごとにトレンドがあります。『巨人の星』『あしたのジョー』といったスポ根ものが一世を風靡した60年代は“因縁ドラマ”、『ドカベン』に代表される等身大のヒーローが主流になる70年代は“大熱血”、『タッチ』が人気を博す80年代は“明るい青春”、90年代は『スラムダンク』を嚆矢とする“リアルファイト”といった具合です。00年代は、トレーニング面にも踏み込んだ『おおきく振りかぶって』などの登場により“専門分化”の時代に突入し、10年代は『高校球児ザワさん』のように“部活あるある”にフォーカスした“日常系”が頭角を表します。そして20年代はどうかというと、より現実的な動きの再現に力を入れる“リアル路線”と、むしろトンデモな設定を楽しむ“荒唐無稽路線”に二極化している印象です。
藤津亮太(以下藤津) 作品でいうと?
南 “リアル”路線だと、長期連載作ですが、サッカー漫画の『GIANT KILLING』や『アオアシ』ですかね。昔の漫画は、ドラマとしてよくできていても、競技の描写はリアルじゃなかった。だけどこれらの作品では、表現力の進歩により、誰から誰にパスが出て、ボールがどう動いているのか、ちゃんとわかるようになっています。

藤津 なるほど。大前提として、スポーツアニメの大半は人気漫画が原作なので、南さんが整理したトレンドの影響を受けやすいです。昨年大ヒットした『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』はリアル路線の代表。サーブからスパイクまでの全行程を描き、バレーボールの1試合相当の尺を見せている。どちらも回想はあるにせよ、アジアや欧州など世界各国でも公開された映画『THE FIRST SLAM DUNK』も同じ構造でした。

藤津 “荒唐無稽”路線の漫画でいうと、どんなものが?
南 『シキュウジ -高校球児に明日はない-』はすさまじい。まず甲子園決勝の延長45回3日目(笑)から始まり、人間離れした怪物同士の狂気じみた戦いが描かれる。「青い監獄」と呼ばれる施設で最強のストライカーを育成する『ブルーロック』も、設定からしてファンタジー要素が強いですよね。

Photo_Kanta Torihata Text_Keisuke Kagiwada