現代のものにはない色や柄、フォルムに無性に惹かれるのはなぜだろう。時間という魔法にかけられて、それらはとってもチャーミングな輝きを放つ。ヴィンテージを愛する人に“いちばんのお気に入り”を見せてもらいました。
クローゼットの宝もの 佐々木恭子さんのパイナップル柄のシルクスカート

レディライクなロングドレスやチュールなどを日常から着こなす佐々木恭子さん。作る帽子も繊細な手仕事のアンティーク調がとても素敵だ。聞けば、長年の経験から古着を見極める目のよさを自認している。
「私、ウィンドウショッピングどころか、店内のラックにかかっている服まで、店の外から直立姿勢のまま眼球だけ動かして、目星をつけてしまうんです。中に入ったらまっすぐそのアイテムを手にしてレジに行くから、一緒にいる人は驚きます(笑)。このスカートを見つけたのも、そんな感じ。中目黒の川沿いの古着店でした」
シャラシャラという衣擦れが素材のよさを感じさせる、床に届くほど丈の長いラメシルクのジャカードスカート。美しいアールを描くセンタースリットも手が込んでいる。フォーマルやカクテルドレスを手がける、ベルリンを拠点とした古のファッションハウスによる70年代頃の作だとか。
「パイナップル柄がすごくかわいいですよね。金糸入りのややふくれ感のある織り柄、上質の素材、ブロンズからカーキのニュアンスカラーも好みでした。今は作ることができない、こうした素材の独特の風合いは、ヴィンテージの大きな魅力。私には少しサイズが大きいけれど、裾をカットするのが惜しいデザインですし、床スレスレかワンクッションではくのがきれいなので、かなり高さのあるウェッジソールの靴と合わせて。それでも裾を擦ってしまうので、ホテルの会場などの室内だけで、表を歩かないように大事に着ています」
シューズは決めているけれど、トップはいろいろ。こっくりしたアイボリーのタフタのノースリーブと合わせてクリスマスパーティに、〈ザラ〉で買ったゴールドのニットとコーディネートして企画展のオープニングに。同系色のざっくりセーターと気負わず着るのもいいなと思っている。
「ヴィンテージにも流行があるんです。白いレースブラウスに麦わら帽みたいな人が多いと思えば、私はやめておきます。せっかくの一点ものなのに、みんなが同じようなカッコにしてしまうのはつまらない。私はクラシックな服の中に、常に新しいフォルムを探しているのかもしれません」
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佐々木恭子
ささき・きょうこ>> 帽子ブランド〈Sugri〉デザイナー。1967年青森県生まれ。セレクトショップ、ウェブストアで商品を展開。月一回オープンアトリエも開催。sugri.stores.jp