野菜の買い置きが切れても玉ねぎだけは一個くらい、ってことありませんか。日持ちがするから、何にでも使える超便利なお助け野菜としても玉ねぎは欠かせない。
でも、新玉ねぎはそうはいかない。春だけの限定。ほかの季節に新玉ねぎが恋しくなっても、次の季節まで待たなきゃならない。私は毎年、新玉ねぎが登場するのをいまかいまか、と待つ。菜の花、さやえんどう、春キャベツあたりが出てくると、さあ新玉ねぎだ!という気分になります。
新玉ねぎは、収穫してすぐ出荷する早生のもの。いっぽう、年中出回っている玉ねぎは、収穫したあと一定期間置いて乾燥させたもの。つまり、新玉ねぎは採れたてピチピチ、フレッシュな一年生。春の到来を知らせる野菜のひとつです。
とにかくみずみずしい。外の柔らかな薄皮を剝くと、水分をたっぷり含んだシルキーな肌が現れ、初々しい。いつもの玉ねぎ特有の辛みも薄く、初めて食べると、ほんのり優しい風味にびっくりすると思う。
春一番の一個は、薄切りにしてそのまま味わいたい。オニオンスライスと呼ぶ、あれです。味つけもシンプルに、塩とレモンとオリーブオイルだけ。スモークサーモンやケイパーを混ぜた一品も好きだけれど、このときはバゲットと白ワインが欲しくなる。和風なら、細かく揉んだかつおぶしを少しだけ振ってポン酢をかけたり。わしわし頰張っていると、新たな季節の息吹を取り込む気分になる。
みずみずしさを堪能したら、次の一個はどうしましょう。 じゅわーっと広がる甘さを味わいたいので、直球のステーキ仕立てはいかが。思い切って厚い輪切りにして、フライパンで表と裏をこんがり焼く。厚さ二センチは欲しいかな。ふたをして蒸し焼きにすると、新玉ねぎのうまみがじゅわんと浮かび上がり、週末のメインディッシュにしたいひと皿になる。または、新玉ねぎに十字の切り込みを入れ、そのままスープ煮にするのもいい。ソーセージやベーコンとの相性も抜群で……と、書いているそばからそわそわしてくる。
シンプルな直球を続けたら、さあ次です。
毎春つくっている「新玉ねぎと鶏ひき肉のあんかけ」を紹介します。
【材料】二人分
新玉ねぎ(中)1個半
鶏ひき肉100g
スナップえんどう6本
醤油大さじ1
酒大さじ1
みりん小さじ2
水2/3カップ
おろししょうが小さじ1/3
ごま油大さじ1
塩少々
水溶き片栗粉適量
【つくり方】
①新玉ねぎを六等分のくし形に切ってほぐす。スナップえんどうはへたを取る。
②鍋にごま油を熱し、鶏ひき肉をさっと炒め、新玉ねぎを加えて混ぜる。
③醤油、酒、みりんを入れてひと混ぜし、水を加えて煮る。
④全体がなじんで新玉ねぎが柔らかくなったらスナップえんどうとおろししょうがを加え、塩で味をととのえてから水溶き片栗粉を入れ、とろりと仕上げる。
とろんとしなだれた新玉ねぎが花びらのよう。派手さはないけれど、春先のおいしさがぎゅっと詰まった簡単なおかずです。ご飯にかけて小丼もいいですね。ほっと心なごむ優しいおいしさ。春を連れてくる。