モデル・矢野未希子さんが写真家・東京祐さんと写真集『as is』を共同制作。限定1,000冊を自費出版する。それを記念して、2023年6月20日(火)から25日(日)まで「Karimoku Commons Tokyo」にて展示を開催。撮影に4年をかけ、被写体としてだけでなく、ディレクションから進行、写真のセレクトまで携わった矢野さんに話をきいた。
矢野未希子がゼロから表現した写真集『as is』を出版
自主制作だからこそ好きなものを妥協なく詰め込んだ!

15歳からモデル活動をはじめた矢野さん。雑誌の色を表現するだけではなく、自ら創造したいと思いはじめたのが作品の制作をはじめたきっかけだったという。
「仕事の撮影現場にはいつもディレクションしてくださる方がいて、リクエストされたイメージに答える。そんな風に、雑誌のキャラクターに調和していくというのがモデルの役割と思いながら17年間駆け抜けてきました。年齢を重ねるにつれて、何もないところから自分で表現してみたい、ゼロから考えたらどんな作品ができるのだろうかという気持ちが大きくなっていったのです。そんなことを考えていたら、4年前にちょうど独立したばかりの東さんと出会いました。それまでは、ほんの数回しかお仕事でご一緒させていただいたことがなかったのですが、素敵な写真はもちろん、その人柄や感性がとてもおもしろく、ゼロから作るなら、ぜひ東さんとチャレンジしたいと思い、お声がけしました。実は、全7回にわたる撮影で、ヘアメイクさんやスタイリストさんは、毎回異なる方にお願いしており、約半数のスタッフさんが初めての方々でした。思いがけない化学反応のように、どんなことが起きるか想像もつかない撮影がしたかったんです」

作品の制作をスタートしてすぐに一冊にまとめることを決めたという。写真集『as is』は、“ありのままの自分”を表現。この写真集にはどのような意味が込められているのか。
「お仕事でぐっと踏ん張る状況が続いたり、緊張する場面も多いので、昔から休みになるとリフレッシュするために緑豊かな場所へ足を運んでいました。自然に囲まれた地に身をおくと、リリースされて本来の自分に戻っていく感覚があるんです。そういった経験から“ありのままの自分”というキーワードにたどり着いたのですが、これがタイトル『as is』の由来。“自然と人肌”というテーマも設けて、さまざまなビジュアル作りを考えました」

表紙に選んだのは、体のパーツにフォーカスした写真。抽象的なシルエットがテーマにもフィットしたという。
「表紙は顔が写っているものが定番なのかもしれませんが、せっかく自分で作ったので、一目ではなにかわからないような意外性のあるパーツの写真にしたくて、パールが乗ったお尻のカットにしました。一見なんだろうとみなさんに考えてもらえるような切り取り方が気に入っています。体のパーツにフューチャーした撮影にも挑戦してみたくて、耳や足にパールやジェリーの素材をからませて撮ってもらったりしました。アイボリーの布地のカバーは、テクスチャーも楽しんでもらいたいです」
大自然での撮影は、思いのままにさまざまな地を巡った。
「自然には、ただ癒されるだけでなく恐怖も感じる。だからこそ、エネルギーをもらえるのだと思うんです。東さんの故郷である北海道をはじめ、友人が住んでいる高知県の岩場や川など、いろんな場所を巡りました。なかでも一面にすすきが生えている原っぱにはとても感動しました。都内では絶対出合えないロケーションなので、行く価値があったと思いましたね」
“ありのまま”を体現するために全力で挑んだ撮影の数々。5mもの毛糸を髪に編み込んだ状態で水中に潜るというハードな撮影もあった。
「全部、楽しそう!やってみたい!行ってみよう!という原動力で進めていったのですが、プールでの撮影はかなり過酷でした。小学生の頃から水泳をやっていたので泳ぎには自信があったのですが、深さ5mの空間は想像以上に怖かったです。息を止めながらポージングをして、かつ目を開けなくてはいけない。でも、プールの水の中は、ぼやけていてほとんど景色が見えないんです。毛糸も水分を含んでどんどん重くなり、長いから首にも絡む。写真だと軽やかそうに見えると思いますが、6時間に及ぶ撮影はすっごくしんどかったです。命がけで臨んだからこそ、自分の中でも特別な作品になりました」

今回、被写体としてだけでなく、本作りの進行もした矢野さん。
「長いこと雑誌の仕事をしてきたけれど、一冊の本ができるまでに、たくさんの過程があることに驚きました。初めて耳にする専門用語も多く、一つずつ確認しながら、いろんな方の力を借りてやっとここまでたどり着きました。そして、妥協なくやりたいことを詰め込んでいくと、とんでもなく費用や時間がかかるんですね。当たり前のように思っていた景色が変わりました」
写真集は、5日間の展示で先行販売される。展示のための空間にもかなりこだわったと語る矢野さん。もちろん、このように設営に携わったのも初めてのこと。
「空間デザインや額装の監修をお願いした建築家の芦沢啓治さんの紹介で西麻布の『Karimoku Commons Tokyo』で展示することになりました。先ほどお話した水中で撮った写真は、ギャラリーのガラス扉に大きく貼る予定です。@aromaさんに依頼して展示をイメージした香りも作ったので、目と鼻で体感できる6日間になっています」
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写真集『as is』
ページ数: 136ページ
販売価格: 1冊 11,000円
販売方法: 写真展会場にて限定1000冊を販売予定。オンライン未定。
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写真展『as is』
日程: 2023年6月20日(火)〜25日(日)
時間: 12:00〜18:00
*20日(火)のみ12:00〜15:00
場所: Karimoku Commons Tokyo
住所: 東京都港区西麻布2-22-5
入場料: 無料
Photo: Hikari Koki Hair&Makeup: Mikako Kikuchi Edit&Text: Nico Araki