アルゼンチン生まれ・フランス育ちの映画監督ギャスパー・ノエは、その実験的試みと過激描写で世界中を挑発し続けてきた。でも当の本人は「早朝、眠れなくて歌舞伎町のドン・キホーテまで散歩したよ」なんて話す、ユーモラスで穏やかな人なのだった。最新作『VORTEX ヴォルテックス』は、「老い」と「病」をテーマに、ある老夫婦の死にざまをスプリットスクリーンで映し出す。本作が“過激描写のない過激な映画”たる所以を、自身の口からひもといてもらった。
💭INTERVIEW
ギャスパー・ノエ監督の脳内にダイブ!「腸のような作りのアパルトマンが気に入った」
身近な「死」に触発された新境地。映画『VORTEX ヴォルテックス』インタビュー
──老夫婦の死にざまを捉えたこの映画のタイトルに、「Vortex(渦)」という単語を選んだ理由は?
人生は、螺旋を描いて進むようなものだから。時間の矢は一方向に進み、同時に円を描く。フランス語には「Vortex」と「Tourbillon」という、「渦」を指す言葉が二つあるんだけど、「Vortex」の方が国際的だし(*英語にも同じ単語がある)、言葉の響きがドラマチックで好きなんだ。
フランス語や英語では悪循環から抜け出せないことを、「VORTEX(渦)の中にいる」という言い方で表現する。だから暗い感じのする、ほとんどネガティブな言葉ともいえる。
あと、6文字の単語だし、最後に「X」がついているせいか、2018年に公開した私の監督作「CLIMAX クライマックス」を連想させるのも面白くて。今回のプロデューサーやクルーには、同作にも関わっている人がいたしね。
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Photo_Norberto Ruben Text & Edit_Milli Kawaguchi