11月後半のとある昼過ぎ、六本木にあるラグジュアリーホテルの一室のドアを開くと、そこに二人の姿があった。『君の名前で僕を呼んで』(17)でブレイクして以来、ハリウッドの若手トップスターとして世界中から熱い視線を浴びているティモシー・シャラメ。そして、名作『ノッティングヒルの恋人』(99)などで「ロマコメの帝王」と呼ばれながら、近年は『パディントン2』(17)の悪役などを通してまた別の顔を見せているヒュー・グラント。
いざ話してみれば、ティモシーはいかにも自然体でスウィートなZ世代ボーイ。ヒューはクレバーで、イギリス流のシニカルなユーモアがなんともおかしい。人柄も世代も違うけれど、その笑いあふれる調和的なムードから、リスペクトし合っていることが伝わってくる。初共演作『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』について深く語ってもらった。(Photo © Julian Ungano)
ティモシー・シャラメ&ヒュー・グラントが考える、「笑い」や「喜び」のツボとは?
来日中の二人に直撃! 映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』インタビュー

──『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』は、とびきり楽しいミュージカル・ファンタジー映画。ジョニー・デップ主演の映画『チャーリーとチョコレート工場』(05)で有名な工場長ウィリー・ウォンカの若き日の物語です。作品を観て、まるで子ども心を取り戻したような気分になりました。
ティモシー それはいい観方だね! 観終わったあと、チョコは食べた?
──コンビニで買って帰りました(笑)。ティモシーさんは主人公ウィリーを、ヒューさんはCG技術によってオレンジ色の小さな紳士ウンパルンパを演じています。初共演していかがでしたか?
ティモシー 「Joy(喜び)」の一言に尽きるね。ただ撮影でヒューと一緒になったのは、ほんの2〜3日間。現場で僕は、(ウンパルンパの代わりとして)棒に乗ったテニスボールに向かって演じていたんだ。彼はセットのすぐそばに設営されたテントにいて、何回かテイクを重ねてから僕もモニターチェックし、ようやく彼の演技の全貌がわかり、また撮影する、というような感じだったよ。
ヒュー 共演は素晴らしかった。でも、ティモシーが言うように難しい部分もあって。私はカメラがたくさんついたクレイジーなヘルメットを装着していたしね。ティモシーのそばにはいたけれど、終始一緒だったわけではないんだ。
──フィルモグラフィを見ていて気づいたのですが、お二人ともジェームズ・アイヴォリーの映画で脚光を浴びたんですね。彼はティモシーさん主演の『君の名前で僕を呼んで』(17)で脚本を、ヒューさん出演の『モーリス』(87)で監督・脚本を手がけていますから。
ティモシー そうなんだよね。実は『君の名前で僕を呼んで』に参加するにあたり、『モーリス』を観たんだ。この2作品はどこか似ている気がするよ。
──青年二人の関係性の構造だとか。
ティモシー そうそう。それに、『モーリス』の舞台はイタリアではないけど、同じように牧歌的で美しい環境が舞台だし。ヒューともそのことは話したと思う。
ヒュー 私も『君の名前で僕を呼んで』は観ていて、気に入ったよ。
──お互いの、撮影前の印象はいかがでしたか?
ティモシー 僕はもともとヒューの大ファン! 彼の映画で育ったようなものだから。僕が過ごしてきた俳優界では、彼はまさにレジェンドなんだ。
ヒュー どこで育ったの?
ティモシー ニューヨークのヘルズキッチン。
ヒュー ああ、そうなんだ。
ティモシー それに、『パディントン2』(17)にも目がなくて。ヒューの演技が素晴らしかったし(*財宝をめぐってパディントンと敵対する落ち目の俳優ブキャナン役を演じている)、監督のポール・キングは今回の『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』も手がけている。二人と一緒に仕事ができることをとても楽しみにしていたんだ。
ヒュー 『君の名前で僕を呼んで』で、ティモシー・シャラメは偉大な新人だと痛感した。だから今回共演することになり、緊張したよ(笑)。
──この映画に出ようと思ったのはなぜですか?
ヒュー ポール・キングのことが好きだし、脚本には笑わせてもらったし、ティモシーはもちろん、オリヴィア・コールマンのような才能豊かなキャストも揃っていた。「イエス」と言うのは簡単だったよ。
──チャレンジングな役ではなかったですか? ウンパルンパは本来、ヒューさんとは似ても似つかないのではと。
ヒュー いやどうかな。ポールから電話で、「ウンパルンパを演じてほしい」と直談判されたんだ。彼が言うには、ロアルド・ダールによる原作小説に登場するウンパルンパの、感傷的でなく、ちゃっかりしたところに惹かれるんだと。だから、彼は私にこの役をやらせたかったんだ。
──ティモシーさんはなぜこの映画に出ようと思いましたか?
ティモシー まず、ウィリー・ウォンカが登場したこれまでの映画が大好きなんだ。
──1971年公開の『夢のチョコレート工場』と、2005年公開の『チャーリーとチョコレート工場』とがありますが、両方ともお好き?
ティモシー そうなんだ。両作品に公平であれ! それに、ロアルド・ダールの小説も。『チョコレート工場の秘密』と『ガラスの大エレベーター』は、子どもの頃の愛読書だった。
ポール・キングとも仕事したかったしね。実は何年か前に、別の企画のために知り合っていたんだけど、その時は実現しなかったんだ。それからヒューも言ったように、キャストが素晴らしい。ヒュー・グラント、オリヴィア・コールマン、ローワン・アトキンソン……。
Text&Edit_Milli Kawaguchi