多様性が謳われる昨今だが、本当にあらゆる生き方を肯定できているのだろうか。それを真正面から問うような、朝井リョウの衝撃作『正欲』が、『あゝ、荒野』『前科者』の岸善幸監督によって映画化された。ある理由で、自分自身でいることが難しく、社会の中で息を潜めるように生きている人々。新垣結衣さんは、その一人である桐生夏月を演じている。言葉少なく、笑顔を封印し、息遣いまで聞こえてくるような繊細な演技で、難しい人物を見事に体現していた。本作について、言葉を慎重に選びながら、静かに語ってくれた。
新垣結衣がいま噛み締める「想像し続けることの大切さ」
生きづらさを抱えた人々の群像劇。映画『正欲』インタビュー
──朝井リョウさんの問題作とも言われている小説『正欲』の映画化。出演されたいと思われた一番の理由は何ですか?
お話をいただいたときには、まだ原作を読んでいなかったのですが、企画書とプロットを読ませていただき、惹きつけられるものがありました。映像化するにあたっては、難しい点もたくさんあるだろうと思いましたが、監督やプロデューサー、スタッフの方々とお会いし、同じ方向を向いて進めると確信したので、出演に至りました。
──本作には、新垣さんが演じた桐生夏月のほか、生きづらさを抱えた人物がたくさん出てきます。世間で「常識」や「普通」と言われる、マジョリティーの思い込みが、誰かを追い詰めているかもしれない。自分も傷つけている側の一人かもしれないと気づかされ、大変ショックを受けました。
原作を読んで、私なりに受け取ったメッセージは、「(他者に対して)想像し続けることの大切さ」でした。自分の知らないところで、とても想像しきれない、それぞれの人のそれぞれの世界がきっとたくさん存在しています。その一端をこの物語から知ることができた気がしています。
ジャケット¥86,900、ニット¥46,200(ともにウジョー|エム tel_03-6721-0406)/シャツ¥29,920、スカート¥42,900(ともにザ リラクス tel_03-6432-9710)/イヤリング¥47,300(ノーム tel_06-6377-6711)/靴¥92,400(パラブーツ|パラブーツ青山店 tel_03-5766-6688)/靴下(スタイリスト私物)
Photo_Yuka Uesawa Styling_Komatsu Yoshiaki(nomadica) Hair & Make-up_ASUKA FUJIO Text_Tomoko Kurose Edit_Milli Kawaguchi