自身の音楽を象徴するようなファッションアイテムを4人のアーティストに持ってきてもらった。大切にしている背景からは、深い思いが伝わってくる。短期連載 #捨てられない衣装ものがたり
シンガーソングライターa子の「捨てられない衣装ものがたり」
a子
SWEARの厚底シューズ
次世代ミューズの歩みを支えるのは
自身のカルチャーに通じる靴
「靴ははき倒すタイプなので全部で3足くらいしか持っていなくて」
そう語るa子さんのいちばんの相棒は、4年前に手に入れたロンドンのシューズブランド〈スウェア〉のプラットフォームスニーカー。購入時には、彼女が率いるクリエイティブ・チーム「londog」でスタイリングを担当しているYuki Yoshidaさんの後押しがあった。
「いつも一緒に衣装を決めていて、海外ブランドにもすごく詳しい彼。スタイリストとしてとても頼りにしていて、そのとき欲しいと思っていた黒の厚底で『何かいいのない?』と相談したら、2秒後には返答が来たんです(笑)。私がよくチェックしている『ビーバドゥービーとかビリー・アイリッシュもはいてるブランドだよ』と教えてくれて。当時の自分からしたら奮発した買い物だったけれど、まだまだ現役だし、間違いなかったなと思っています」
唯一無二のウィスパーボイスとともに奏でるサウンドは主にLAやUK。ファッションには後者のエッセンスを織り交ぜて音楽とリンクさせているのだそう。そんな背景も加味して選んだこちらの靴、お気に入りのポイントは?
「やっぱり、どんな服にも合わせやすいところです。もともとオレンジの靴紐もかかっていたんですが、真っ黒にしたくてすぐに外してしまいました。10cmくらいあるボリュームソールは最初こそ筋肉痛に悩まされていたけど、いまでは足になじんできて、むしろありがたい存在に。ロング丈のワイドパンツをはくことが多いので、これさえあれば裾を引きずる心配もなく重宝しています」
つま先の擦れや底が減る経年変化も味わいととらえ、ますます愛着が湧いてきたという。実は2022年に公開された「天使」のMVにも、花畑の前に置いた椅子に座っているシーンでチラリと登場する。
「ライヴだったり撮影だったり、表に出るときは積極的に私物を使うようにしています。最近は私の身につけているアイテムをファンの方々が探し出して、同じものを買ってくださることもあって。Instagramのメンションなどで『見つけました!』と報告をもらっては幸せ気分に浸っています」
取材当日はうっかり忘れてしまったという〈PREEK〉のハートモチーフのリングも頻出させていたら、かなり反響があったとか。
「私にインスピレーションを与えてくれてきたロールモデルたちのように、今度は私が、ひとりのミュージシャンとしてだけでなく、誰かの憧れるファッションアイコンになれたらうれしいです」
Photo_Shiori Ikeno Text_Erina Ishida