「僕のことはダンサーと呼んで」。ドキュメンタリー映画『コール・ミー・ダンサー』(11月29日公開)で、熱意を込めてそう語るのは、主人公のマニーシュ・チャウハンだ。ムンバイ出身で、決して裕福ではない家庭に生まれながら、独学で踊ることを学びはじめ、やがて世界へと羽ばたいてゆく——。今作で来日も果たした彼に訊く、“好き”に真っ直ぐ生きることの幸福と責任について。
インドのタクシー運転手の息子から、世界を舞うダンサーへ
映画『コール・ミー・ダンサー』マニーシュ・チャウハンにインタビュー
——インドからイスラエル、そしてアメリカへ。映画を観て、マニーシュさんのワイルドな旅路に驚きました。インドでは占星術がポピュラーだそうですが、これほど世界中を旅することになるなんて、予言されたことはありましたか?
実は11〜12歳の頃、手相をみてくれた人から、「この子はいずれ世界中を飛び回る」と言われて。全然信じていなかったけど、結果的に現実になりました。
——ダンスの恩師であるイェフダ(・シャンパイン)が、本作の監督であるレスリー(・マオール)に声を掛けたことから、この映画ははじまったんですよね?
そう。僕らのことをドキュメンタリーにしたいというオファーはたくさんあったけど、レスリーはもともとイェフダの教え子。独身のイェフダにとっては、ダンサーたちが家族そのものなんです。撮影中、レスリーはいつも「これはマニーシュの物語なんだから、望むことはすべてスクリーンに映そう。悪いように描くことは絶対にないからね」って。ダンスシーンにおいても細かいミスを見分けられるぶん、ベストなテイクを採用してくれました。レスリーにとってはじめての長編映画で、資金的な問題がある中、監督のみならず編集、宣伝などほとんどの役割を自分でこなしたんです。彼女を突き動かしていたのは、まさにダンサー精神。僕と同じで、何事も最後までやり遂げる、とても粘り強い人です。
Photo_Yudai Emmei Text&Edit_Milli Kawaguchi