深い思いやりと行動をもって、仕事に向き合う人。相手と接する際の意識と姿勢から、学ぶべきマナーが見えてくる。
香りデザイナーに教わるホスピタリティ【仕事で活きる、心遣いのティップス】
香りデザイナー
武石紗和子
〈アットアロマ〉センディングデザイナー
記憶にダイレクトに刻まれるからこそ
空間との調和を重視する
アロマテラピーインストラクターとして、香りをデザインする武石紗和子さん。ホテルやアパレルショップといった〝おもてなし〟の最前線を彩るオリジナルの香りを生み出す。
「嗅覚でキャッチした情報は嗅神経から直接、記憶や情緒などを司る大脳辺縁系へ入ります。五感のなかでもっともプリミティブで本能的な感覚でもあるので、ごまかしがきかない。その分、心を尽くす甲斐があります」
香りは目に見えず、主観やコンディションによっても捉え方が変わっていくため、クライアントとともにイメージを浮き彫りにしていく。
「空間のための香りづくりでは、その場でアロマが果たす役割や、スペースでのなじみやすさに重点を置きます。訪れる人に心地よくなってもらうためのツールなので、求めている香りのイメージを共有していきます。あるアパレル企業のショールームで用いるアロマを創作したことがあるのですが、まず、キーワードを出し合うところから始めました。テラコッタやチャコールといったアースカラーの製品、〝空〟〝大地〟〝岩肌〟などの雄大な景色を用いたグラフィックのイメージ、内装のカラーと素材など。取り巻く環境から連想するものを挙げます。香りにも色があるので、そのスペースと好相性となるものを絞り込んでいくためです。ディスカッションを重ねた結果、ウッディさの中に甘さを持つホーウッド、スパイシーなクラリセージとパチュリなど数種類のエッセンシャルオイルを調合しました」
武石さんの脳内には200種以上のエッセンシャルオイルのプロフィールが保管されているそうだ。自宅でも香りによる歓待はできるのだろうか。
「扉を開けた瞬間に感じるアロマは、家の第一印象を決めますので、玄関でルームスプレーを吹きかけるといいです。いまの時季だと爽やかなミントやユーカリがおすすめ。一瞬の芳香が楽しめる天然成分がベターですね。相手が自分の香りに戻れる隙を作るのも、思いやりになりますから」
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武石紗和子
アロマ空間デザインに関するスクールや、企業セミナーの講師としても活動。香りのブランド〈アットアロマ〉に所属している。