ひとえに「移住」といっても行き先や働き方は十人十色。都会暮らしを経て、自然豊かな土地へ移住を決めたクリエイターを訪ねる新連載「移住で叶えるニューライフ」第2回をお届けします。移住先ではどんな暮らしをしているの?都会との距離感は変わった?ぶっちゃけ大変?取材を通じて、移住ライフのリアルな声を聞いていきたいと思います。
移住で叶えるニューライフ「東京と松本の2拠点生活で、念願の雑貨店オーナーに」
vol.2 スタイリスト荻野玲子さん@長野県松本市

第2回はスタイリストの荻野玲子さん。東京都出身の荻野さんは、スタイリスト岡尾美代子さんに師事後、2013年に独立。広告や雑誌を中心に、ファッションとインテリアの分野で活躍されています。2021年より長野県松本市に住居を構え、世界各地のヴィンテージ雑貨を扱うショップ「REVONTULI」をオープン。現在は、平日は東京でスタイリストの仕事を、週末は松本で店主として店頭に立つ2拠点生活を送っています。

───東京で生まれ育った荻野さんが、松本市に住むことになったきっかけを教えてください。
私はもともと登山が好きで、長野県の燕岳(つばくろだけ)はお気に入りの山の一つでした。北アルプスの中でも、入門と言われている場所です。毎年友人たちと登っているうちに、いっそ山の近くに住んでみたい、という気持ちが密かに芽生えていました。生まれてからずっと東京にいるはずなんですけど、人混みも電車もすごく苦手で、穏やかな場所で過ごす方が性に合っているんです。だけどスタイリストの仕事は、撮影商品のリースや荷物の保管などもあるので、なかなか東京を離れる踏ん切りがつかず…。ある時、仕事先で会った人に「この前渋谷でお見かけしましたけど、どん底みたいな顔してましたよ」と言われて、こりゃダメだなと(笑)。東京の家に住み続けながら、もうひとつ帰れる場所があるといいなと思うようになり、都内と行き来しやすい場所で家を探し始めました。山梨や長野の物件をいくつか見てみて、ここ松本にご縁があったという感じでしょうか。

───燕岳の近くに住む夢が叶ったんですね。東京と松本は、どんなペースで行き来しているのでしょうか。
平日は東京でこれまで通りスタイリストの仕事を、週末は松本で店頭に立ちながら、ゆっくり過ごすような生活を送っています。東京―松本間は長距離バスを使うことが多く、松本市内では車に乗って移動するようになりました。近所のスーパーまで食材を買いに行ったり、ご飯を食べに行ったり。近隣のお店とのつながりも広がりました。ハーブを育ててお茶をブレンドする方や、洋裁を愉しむお店、バッグやカトラリーなどを制作されている作家さんたちとも繋がれて、とても刺激になります。毎年開催されるクラフトフェアも有名ですし、ものを作る方が多い街に自分のお店を開けてよかったなと感じています。

───実際に松本市で暮らしてみて、どのような生活の変化がありましたか?
私は、こちらに「生活」をしに来ているような気がします。旬の野菜や果物を買って、その日の献立を考える。空気も水も美味しいですし、以前よりも、ご飯を作って食べる時間が楽しくなりました。逆に東京では、野菜を余らせてしまうのがもったいなくて、外食が多くなったのも事実です(苦笑)。あとは、松本に来てから毎週のように温泉へ行くようになったんです。山登りの後に入るのが最高で、すっかりハマってしまいました。燕岳の麓にある中房温泉が素晴らしく、登る前よりも元気になるくらい、すっきりと体が軽くなるんです。こちらに来てからは東京の生活とも切り替えができて、ずっと健康になったと思います。
Photo: Mizuki Matsuda Text: Satoko Muroga