“クリエイトする人たち”の日々を支えるアイテムとは?偏愛エピソードと共にお届けします。
イラストレーター・unpis ひらめきをくれる愛用品

イラストレーター・unpis
愛用品「白い鳥のオブジェ」

単純で美しいフォルムを眺めながら
描きたい「線と形」を見つける
書籍や雑誌の装画から、"ほぼ日"のイベントロゴやユナイテッドアローズのLINEスタンプまで、今、引く手あまたのイラストレーター、unpis(ウンピス)さん。ぽかんとした真ん丸な目の人物や単純な線と形で描かれた日用品は、目にするたび"なんかいいな"と思わせる。
そんなunpisさんの自宅兼アトリエには、さまざまなオブジェが飾られている。グラフィックデザイナーが手掛けた陶器の牛、布で作られた置き物、ユーモラスな民芸品に郷土玩具。
「形や素材に惹かれて買うことが多いんです。絵を描く時のヒントになるし、眺めているとアイデアが浮かんだりもするので」
中でも大好きなのは……と手に取ったのは、丸い目をした鳥のオブジェ。一筆書きのような、ツルンと型で抜いたような、とびきり簡素な造形だ。実はこれ、英国で1969年に作られたプラスチックの風呂用玩具。ネットで見つけて即買いした。
「絶妙に抽象化されたフォルムが、本当に可愛い。いちばん簡単な線だけで魅力的な造形になっているところにぐっときます。たぶん私は、量産された形が好きなんでしょう」
優れた量産品の形は、手間をかけず大量に作れるよう最適化されていて、その形は老若男女に広まり愛される。unpisさんが目指すのも、そういう量産品に通じる"最適な形"だ。
「描く時はできるだけ情報量を削ぎ落として、線を単純化します。その際、例えば鳥なら、まずはどんな要素が鳥を鳥らしく見せているのか考える。リアルな鳥の写真やオブジェをスケッチし、"このカーブが鳥っぽさの要なんだな"って確認するんです。そこを生かしたうえで、最も心地いいと感じる線を探ります。本当はこのあたりに羽根の線が見えるはず、というような場合でも、無いほうが気持ちいいなら削りますね」
そして、たくさんのオブジェの“素材”もまた、絵を描くモチベーションや発想の源になる。
「プラスチックだから、この鳥のツルンとした形が生まれた……というように、素材の特性が形に直結しているものを見ると、無性に惹かれるんです。硬い木だからちょっとぎこちない造形になり、金属だからソリッドな曲線が成り立っている。最低限の加工で素材の面白みまで表現しているオブジェを見ると、カッコいいと思うし、そういう絵を描きたいな、と憧れます」
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unpis
ウンピス>> 福島県生まれ。イラストのほか、ハグする二人を表現した[HUG]など陶芸作品も手掛ける。2024年12月14〜29日、京都「VOU/棒」で個展。最新作は物語も担当した絵本『あれ?』(小学館)。
Photo_Naoto Usami Text&Edit_Masae Wako