カメラが固まるほどに極寒のモスクワ、サンクトペテルブルクの街角で、実際にロシアンユースたちを追いかけてみた。そこには、一見クールだけれど熱を帯びた若者たちの姿があった。
ロシアンユースを追いかけて極寒のモスクワへ。今一番気になる国、ロシアのストリート事情「ロシアの街角から」
新しいムーブメントが次々生まれるモスクワでは、クールなロシアブランドとしてWalk of ShameやSputnik1985が挙がった。若者がクラブやパーティで遊ぶというのは世界共通。今回潜入したミュージシャンやスケーターからも評判の「16tons」のほかに「ARMA17」「Gazgolder」「NII」など人気のクラブがいくつもある。
ロシアのストリート事情ポストソビエト・ユースのキーパーソンが輩出する、カルチャーの中心地モスクワ。20代の若者たちは、パーカ、デニムに、雪道でも滑らないスニーカーといったラフな格好で、仲間の集うクラブへと出かけて行く。彼らの志は高く、ファッションやデザイン、音楽など、クリエイティブなことに関心を向ける。「ロシアの存在そのものがアンダーグラウンド」と街で出会った学生が語る通り、ストリートカルチャーはモスクワの主流になっている。自らが経験していないソビエト時代へのノスタルジーと、急激な社会変化の最中で育ったという背景とともに、アングラ精神がそのままユース世代の創造の柱なのである。ロシアのクールな人物は? と問いかけると、ゴーシャ・ラブチンスキーとの答えが断トツで返ってくる。彼の洋服を持っていようがいまいが、その支持は絶大だ。西洋とも東洋ともつかないロシアのスタイルが、今、世界的に注目を浴びていることに対しても、「ロシアにもともとあった文化が、ゴーシャの出現によって知られるようになり物珍しく思われているだけ」とユースたちは冷静に受け止める。 モスクワと、そのさらに北に位置するサンクトペテルブルクとは、東京と京都のようなムードの違いがある。エルミタージュ美術館など観光都市としても名を馳せるこの街では、素朴な若者たちがより自由に活動している。長引く不況で空きのできた工場をリノベートし、デザイン事務所やスタジオとして活用したり、生地問屋がファッションブランドに積極的に協力したりと、クリエイティブを支える基盤ができている。停滞する経済によって、若者たちには、自分たちで何かを作り出さなくてはならないという気概が生まれている。それがクリエイターを育てていくコモンズとなっているのだ。
Ping Pong Club Moscow
モスクワのファッショニスタの間でブームとなっているのが卓球。フォトグラファーのAlexey Kiselevが2011年に始めた、「Ping Pong Club Moscow」がそのきっかけ。デザイナー、スケーターらが集い、卓球とともにライヴやパーティを催して盛り上がる。「ロシアのみならず今、世界中の若者はみな同じ波に乗っていて、かつて人気だった卓球というスポーツ文化を私たちは取り戻したいの。今年はギリシャで合宿する予定よ」と共同オーナーのDasha Shevelevaは意気込んでいる。