人生思い通りにならない、なんて挫折した経験は多くの人にあるのではないでしょうか? ただ、挫折を「失敗」ではなく「学び」に変えて人生に活かすことが出来れば、それは決して無駄なことじゃありません。挫折を感じるシーンは十人十色ですが、今回の相談者は絵に描いたような真面目なキャリアを歩んできたひかるさん。まさに優等生! な彼女は、はたから見たら順風満帆そのものかもしれませんが社会人になった今、思いがけないところで挫折に直面しています。人生の先輩である経済評論家の加谷珪一先生に3度の転職を経た編集Sが「見栄の張り方」について話を聞きました。
挫折はチャンス! 凡人だってお金持ちになれる:お金に愛される夢の叶え方

編集S:夢への具体的なアクションを考えている最初のケースと、前回のやりたい仕事に踏み出したけど不安に押しつぶされそうだという相談者とも今回は毛色が違います。都内の大学を卒業後、希望する大企業に就職を果たしたひかるさん(仮名)です。ちょっと硬い話題ですが、男女平等参画社会とか言って女性もバリバリ働こう、待遇も男性と同じにするから! みたいな風潮あったじゃないですか? 実態は皮肉なのか、ここ数年でバリバリ働くよりある程度お金も貰えて安定した一般職の方が人気のようです。ひかるさんもこのパターンですね。
加谷:転勤がある総合職だと、マイホームを購入した途端に転勤させられることとか、実際にありますから。私がサラリーマンだった頃からありましたよ。出世とか給料UPを犠牲にしてもこういう職種を望まない学生が増えてきたのは、価値観の多様性が出てきたからでしょう。
編集S:ひかるさんは社会人一年目。第一志望だった商社の一般職として働いています。順風満帆な将来なんだろうな〜と思ってしまいますが、本人はそうでもないみたいです。
安定しているはずなのに全然お金が足りないひかるさん・24才(仮名)
「商社の一般職と聞くと勝ち組だと思われるかもしれませんが、お金がないんです。何でかって? そう思いますよね…… 私も不思議です。一人暮らしなんですけど、生活も自分なりに工夫しているつもりだし。まあ、身だしなみはかなり気を遣います。商社で働いていると、周りの同僚は総合職、一般職問わずみんな小綺麗センスの良い人が多いので。“期間限定”“新作”といった言葉を見れば即買いします。買いすぎることより、足りなくて恥をかくことの方が嫌です。お金は、ボーナス払いができるしあまり心配していませんでした。
でも先日、1人暮らしの家の電気が止まって……誰にも言えないくらい恥ずかしくなりました。貯金はもちろんないので、ふと将来が不安になりました。昔から漠然と、ある程度お金持ちにはなりたいって思ってきました。そのために、人より努力して評価の高い大学に入って、周りが羨むような会社に入ることができました。これで私の人生上手くいくと思ったんですが、全然ダメ。自分としては節約できる部分がないので、どこから手を着けていいのか分かりません」
一生付き合わない相手に見栄を張ってもムダですよ
加谷:かつて総合商社の一般職は、実家暮らしで生活に困っていない人だけを採用するといった時代もありましたから、今でもそうした社風が残っているのかもしれませんね。その中で、余裕のある人とガチで張り合っていては、収支がカツカツになるのは当然といえば当然ですよ。
いいですか? 人は、あらゆることに完璧でありたいと考えるものですが、物事には限界があります。ひかるさんが、見栄を張りたくなるのもわかりますが、果たして会社の同僚は絶対に見栄を張らなければならない相手なのか、もう一度考え直す必要があるでしょう。
編集S:ちなみに、遠距離恋愛中の同い年の彼氏がいるそうで、結婚も考えているそうです。
加谷:今、勤めている商社でこれからもずっと働き続けるのか、彼氏との結婚を考えているのか、もし結婚するなら仕事はどうするのか、など、それによって今の勤務先の重要度は変わってきます。結婚をして今の仕事から離れるなら尚更ですが、一生勤務するつもりがないのなら、意味のない相手に見栄を張っていることにもなりかねません。
編集S:社会人経験が浅くて正解が分からないからこそ、せめて身だしなみだけでも追いつきたいって思うこともありましたが、振り返ってみると、そこを頑張ったことによる「リターン」ってほぼゼロな気がします(苦笑)なんなら、あの時に使い込んだお金が今あったらもっと役に立つ使い方ができるのに!と後悔します。
それにひかるさんは、良い大学に入って良い会社に入ればお金持ちになりたいという目標まで保証されるとでも思ったんですかね。世間的な評価が高い会社に入るのと、自分が幸せになれるかは全く違う話ですよね。価値判断の基準がかなり他人本位な印象で、危うさを感じます。周りがこれはダサいとか嫌いって言ったら、たとえ自分の好きなことでも手放しそう。
加谷:見栄は、張るべき相手に張らないと意味がない、というのは人生の鉄則です。ひかるさんは、もっと抜本的に生活を見直す必要があるかもしれませんね。いくら上っ面は良くても内情はガタガタ。まずは自分が心から望むことを突き詰めて、いらないものをそぎ落としていく。それから「足るを知る」こと。話はそこから、のレベルです。
まだ独身なら、収支の調整もやりやすいはずです。効果が大きいのは、影響の大きい費目をバサッとカットすることです。ちょっとずつお菓子を我慢したり、値段の安いランチスポットを探すような、細々とした節約を積み重ねるより効果的です。例えば、いま1ヶ月あたりの美容・衣料代にかけている6万円を期間限定で我慢してみることから始めてみてください。単純に半年だけで36万円手元に残るはずです。
凡人でもお金持ちになれる
加谷:「お金が貯まらない」「お金持ちになれないの?」と不安に思う若い方は多いかもしれません。しかし、お金持ちの全員が天才なわけでは決してありません。天才肌はむしろ少数派で、お金持ちと言われる人の多くは特別な才能なしに成功しています。では、この人たちの共通点は何かというと、徹底した合理主義だということです。そう聞くと「守銭奴」をイメージされるかもしれませんが、決してそうではありません。無駄なことと意味のあることを理解してお金を使っているだけです。
お金持ちの中には、親が実業家で小さいころからそうした考え方が身についている人もいますが、たいていは社会人としてのビジネスや投資の経験を通じて、失敗を重ねながら培ったものです。若いころはふつうの生活をしていたという人も多いですよ。
これまで自分なりに考えて、その通りに歩んできたひかるさんにとっては今回のことは大小なりともショックでしょう。今まで上手くいっていたやり方が通用しない状況なのですから。ただ、これは変わるチャンスでもあります。失敗の経験を学びに変えれば、これも「将来のための勉強代」という名目もつきます。ひかるさんはまだ20代前半です。収支を安定させて、もっと大きい「成功」を目指すチャンスは十分ありますよ。
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加谷珪一
経済評論家。仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務に従事。その後、コンサルティング会社を設立し代表に就任、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。経済、ビジネス、マネー、政治、ITなどの分野で執筆を行っており、多くの媒体で連載を持つ。「加谷珪一の分かりやすい話」にて、お金から社会問題まで、日々情報を更新中。