クォーター・ライフ・クライシス。それは、人生の4分の1を過ぎた20代後半〜30代前半のころに訪れがちな、幸福の低迷期を表す言葉だ。25歳の家入レオさんもそれを実感し、揺らいでいる。「自分をごまかさないで、正直に生きたい」家入さん自身が今感じる心の内面を丁寧にすくった連載エッセイ。前回は vol.18 この道も、いつか来た道、に
家入レオ「言葉は目に見えないファッション」vol.19 見えぬけれども

vol.19 見えぬけれども
昔、小学校の図書室で読んだ詩。
金子みすゞさんの「星とたんぽぽ」
目に見えないだけで、昼間の空にも星が浮かんでいることを知った時。
私の心は感動で、蒼く透けた。
「見えぬけれどもあるんだよ、見えぬものでもあるんだよ。」
遠い過去から注がれる優しい眼差し。
「瞳に映っているものが全てじゃないから。心の目で世界を見ることを忘れないで」
そう言われた気がした。
私は図書室の窓からまだ青い空をゆっくりと見上げ、そこで輝き続けているはずの星たちを想ったのだった。
だけど、今大人になって。
そんな自分をどうしても大事にしてあげられない時がある。
私とあなた、というコミュニケーションの域からはみ出てしまうと、それは起こりやすい。
滅多に行かないけど、例えば大人数での飲みの帰り。
ちょっとした相手の表情や仕草が気にかかってしまって。
心の目で世界を見つめ過ぎてしまう。
言わなきゃよかったかな、とモヤモヤしている自分が面倒くさい。
誰もそんなこと気にしてないって分かっていても、暫く考えることをやめられず、ひとりが一番楽だと思ってしまう。
でも、ある打ち合わせの後、みんなでお酒を飲みながら、例の如く少し不安になり、あれ大丈夫だったかな?と尋ねたら。
「考え過ぎだよ〜。」と。
分かってるんだけども…、と心の中で思いながら。
でも、心地良い酔いと、気心しれたスタッフさんの一言にやっぱり気持ちが解けて。
「普段から半分で周りを感じてみたら?」と言われた時、気づいたことがあった。
「考え過ぎて、苦しくなることもあるんだけど。日常を半分で感じたら、きっと歌も半分でしか歌えない気がする。」
そう伝えると、その人は、じっと私を見て。
「そうかぁ、そうだよね。じゃあレオ氏が今日みたいに、ちょっと不安になったら、教えて。そしたら、それは確かにそうだね、とか、考え過ぎだよ〜って今日みたいに言うから」
私は、嬉しくて、きゅっとした胸で頷いた。
きっと、私と同じように、想像力を難しい方向に使ってしまって、疲れてしまう人が今、たくさんいると思う。
学校や会社で、相手の気持ちを追いかけるあまり、自分の意見を大切にすることをつい、忘れてしまったりして。
自分の意見を伝えたら、伝えたで、大丈夫だったかなぁ、と立ち止まったり。
いや、もう、どうしたらいいの?!と、泣き笑いしてるあなた。
心の目で世界を見つめる、その想像力は確かに都合良くコントロールできたりしない。
だけど、きっと、あなたのその感じとる力で、笑顔になれている誰かがいる。
自分を後回しにせずに、生きて欲しい。
どうしようもなくなった時、私の歌を聞いてみて。
考え過ぎちゃう私が、考え過ぎだよ!って背中をバシッと叩けたら良いな。
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家入 レオ
16thシングル『未完成』(フジテレビ系月9ドラマ『絶対零度〜未然犯罪潜入捜査〜』主題歌)のginzamagでのインタビュー:
家入レオ、愛と憎しみの区別がつかなくなった「未完成」。
leo-ieiri.com
@leoieiri