クォーター・ライフ・クライシス。それは、人生の4分の1を過ぎた20代後半〜30代前半のころに訪れがちな、幸福の低迷期を表す言葉だ。25歳の家入レオさんもそれを実感し、揺らいでいる。「自分をごまかさないで、正直に生きたい」家入さん自身が今感じる心の内面を丁寧にすくった連載エッセイ。前回は vol.25 健やかな忙しさ
家入レオ「言葉は目に見えないファッション」vol.26 考え方の鍛え方

vol.26考え方の鍛え方
デパートの化粧品売り場。エスカレーターに乗りお目当ての階を目指す。「プチプラも侮れないけど、やっぱり〈SUQQU〉や〈ルナソル〉のアイシャドウは粉飛びしなくて優秀だよね」と友達とLINEで会話したのが数日前。打ち合わせが終わり、歩道橋の上から久しぶりに見た渋谷。家に帰るのが惜しいような気持ちになってしまってそのまま街に流れてしまったのだった。
特に欲しい物も見たい物も、ないような、あるような。そんな調子で出たり入ったり。その度店先の消毒液で手を除菌して。でも、どうしてだろう。買い物も人生も、意気込んでない時の方が上手く行く。
化粧品売り場のフロアの一角。アイシャドウの新色を見ていると、店員のお姉さんがさり気なく隣に立ち商品の説明をしてくれる。手の甲で色味や質感を見せてくれながら、「こういうご時世なので目元でお試し頂けないのが申し訳ないのですが…」と髪色より1トーン程明るい眉がハの字に下がる。
「普段何色のアイシャドウをお使いですか?」と尋ねられ、「日常使いしやすいブラウン系が多いかもです…」と答えると、「以前は目元に落ち着いた色を持って来てもリップで遊び心をプラス出来てたから…でもマスク生活になって、目元しか見えない今だからこそちょっと大胆なカラーを目元に忍ばせる方が増えてるんですよ」と悪戯っぽく笑った。
私はその話を聞きながら、すごいなぁと感動した。どんな状況も逆手に取って、最終的には新しいことに挑戦してみるきっかけ、として捉えてしまえる人間の逞しさ。現実は変えられないからこそ、視点を変えてみる。発想の転換。
じゃあ…私もこの新色買ってみようかな、とピンクに上品なパールが入ったパレットを指差すと何だかこちらの胸まで踊り出すからお洒落って不思議だ。あっこの気持ち。この気持ちの為に人は生きているんだ、と思った。お腹を満たす為に、乾いた喉を潤す為に、確かに人は働いている。だけど、それだけじゃあまりにも味気ない。あの洋服が欲しい、美味しいものが食べたい、ライブや舞台に行きたい。働く張り合いがあってこそ、踏ん張れることだってある。
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家入 レオ
16thシングル『未完成』(フジテレビ系月9ドラマ『絶対零度〜未然犯罪潜入捜査〜』主題歌)のginzamagでのインタビュー:
家入レオ、愛と憎しみの区別がつかなくなった「未完成」。
leo-ieiri.com
@leoieiri