スタイリスト谷崎彩さんが愛するファッションの話。
スチームかけの達人になる!– スタイリスト谷崎彩の超私的ファッション愛 #11

“洋服愛”が募ってくると、お気に入りをいかにキレイに長く着続けられるか?が重要課題になってきます。さらに大切な服はなるべく自分で洗いたい!と洗濯に凝り始めたのですが、最終的にそれを綺麗に仕上げるのに「スチームかけ」がいかに重要かに気づいた次第。 あれこれ使ってみて、スチーマーにありがちな水ジミができなかったのと、スチームをかけながらアイロンもかけれる利便性からパナソニック製のに落ち着いたのですが、今度は本当にこの使い方であってるの?疑問がムクムク….。そんなわけで、今回はパナソニックさんへスチーマーについて習いに行ってきました。
まずはスチームかけの下準備から
私の愛用スチーマーはパナソニックの衣類スチーマー、タンク2倍モデル。このスチーマーだとハンガーに吊るしたままアイロンも充てられるので、アイロンミトンも良く使います。アイロン面から持ち手までの高さがより低く設計されていて、“手のひら感覚” 本当に手で撫でながらシワを伸ばしている感じで驚くほど使いやすかったです。
まず、衣類についている絵表示にアイロン記号を見て衣類スチーマーを使えるか確認します。衣類を引っ張りながらスチームをかけても、ずれないようにハンガーをセットします。
シャツにスチームをあてるコツ
コットンはアイロン面を直接あててもOK。添える手はシャツの裾、前後両方を持ち、軽く引っ張りながらスチームをかけていきます。
袖の中に添える手を入れ、少しずつ引っ張りながら下に移動させていく。つい上下に早くスチーマーを動かしがちですが、そうすると衣類に届くよりも先にスチームが逃げてしまいます。ゆっくり下にスライドさせながらかけていく方が短時間で綺麗に仕上がります。
細かい部分のシワを更に綺麗にしたい場合はスチームボタンを押さなければ熱い蒸気がでてこないのでアイロンミトンなしでも手を添えてかけることができます。(でも火傷には注意してくださいね。アイロンミトンがあると便利な場合もあります。)
リネン ×コットンのパンツにスチームをあてるコツ
リネンもしくはリネン混の素材はシワになりやすく、キレイにシワを伸ばすのはなかなか手強いのですが、アイロン面を直接あてても大丈夫なのでひたすら根気強く、丁寧な気持ちで 、左手 (もしくは右手)を添え、少しずつ引っ張りながら下にスライドさせてスチームをかけて下さい。
楽しいくらいキレイになりますよ。かけにくい立体的なところは中に衣類スチーマーを通してあててあげるとよりキレイに速く仕上がります。(パナソニックのスチーマーは360℃ワイドスチームなので可能です。)
フリル等、立体的な箇所を仕上げるコツ
ポリエステル製の服はアイロン面を直接あてないように!
① 衣類から少し離して、ゆっくりスチームをあてていきます。(縦じわが多い場合は横にゆっくりスチームを動かす。何度も振り動かすのは効果がありません)
② そのあと、スチームで柔らかくなっているので手で優しくひっぱりながらシワを伸ばしていきます。最後の仕上げは“人の手でやること”がとても大切なのです。
③フリルやギャザーのような立体的なところは広げて隙間にスチームを入れてあげつつ、手で形を整えていくとより、フンワリ立体的に仕上がります。
シルクスカーフにスチームをあてるコツ
シルクには直接アイロン面をあててはダメ。薄手のものは手で伸ばしつつ、ゆっくりスチームをあてるだけですぐにキレイになります。
パナソニックにスチーマーについて聞いてみた
谷崎彩(以下、A):スチーマーっていつくらいからポピュラーになってきたのですか?
パナソニック(以下、P):2012年あたりから環境省で「クールビズ」が打ち出された影響もありノーアイロンで着れるシャツや、形状記憶の衣類が多くでてきました。女性の洋服でレース、シフォン、フリル、ドレープなどの立体的な形状でアイロンかけは難しい衣類が流行し始めました。 それでアイロンの需要が減りつつ、そのような衣類のシワが簡単にとれて、なおかつ衣類についた臭いもとれるスチーマーの需要が伸びてきたのです。 以前からスチーマーは製品としてあったのですが2013年改めて本格的な衣料スチーマーを販売、2016年には360度どの角度からもスチームが出せるようになりました。安定したスチームが出るよう、自動でヒーターのON/OFFを繰り返す設計になっています。湯飛びのようにスチームの出すぎによって、できてしまう水ジミも抑えています。
A:素材ごとの詳しいスチームのあて方はこの後、実際に教えて頂きたいのですが、そもそもシワってどうやって伸びるのですか?
P:ちょっと化学的なお話をすると!
①“乾いている時、繊維の分子は水素結合している”ので、つまりシワのまま乾いているとシワの形状で分子が水素結合してしまいます。
②水素結合は水に濡れると切ることができます。なので、スチームなどで水に濡らし、水素結合を切り、アイロンの重さで圧力をかけるか、スチームをかけながら手で伸ばしていくことによって繊維(分子)をキレイに並べ直します。
③分子がキレイに並んだところで熱を加えて、再び分子同士を水素結合させます。
こうやってシワが伸びていくんです。水で濡らし、形を整え、熱を加える。スチーマーの機能そのものですよね。洋服が縮んでしまった!!というのも実はシワで生地が縮んでいる場合もあるので、この理論で根気よくスチームをあてて伸ばしてあげると、ある程度は元に戻せます。
ところで、スチームかけで一番大事なのは添えてる方の手の働き。スチームをかけたら手で整える一手間が大切。そもそもスチームをかける以前に、お洗濯で脱水が終わってまだ湿っている状態の時にシワを伸ばして”から干すだけで、仕上がりがかなり違います。“お手入れ”というくらいですから、やっぱり人の手って何より優秀なんですよ。
A:余談ですが、パナソニックさんで統計をとったところ、女性は朝出かける前にシワをとる為のスチーマー利用率が高く、男性は帰宅してから匂いをとる為に使う割合が多いのだとか。ちなみに匂いがとれるメカニズムは繊維と繊維の間に潜んでいる匂いをスチームでシューっと押し出すイメージ(うん、これは匂いがよくとれそうだ)。
A:あと、何かスチーマーを使う上で注意する点とかありますか?
P:そうですね・・・。使用して頂く水は水道水をお使いくださいね。硬質のミネラルウォーターだと高音の機械本体の中で水が蒸発してミネラル分だけが残り、固まって目詰まりの原因になります。それから、使用後は必ず、水は捨ててくださいね。ところで、Tシャツ、ポロシャツもなるべくスチームをあてて着て下さい。こういう平面的なアイテムの方がシワの影が目立って汚れているように見えますから。着てるうちにシワが伸びると信じてる方が多いのですが、気合いでシワは伸びません!!シワ状態の水素結合を切って、伸ばして高温をあててもう一度、キレイに結合させて着て下さいね。
A:ありがとうございました!これからもスチーマーかけ、頑張ります。
2022年3月追記
現在、愛用しているパナソニックの衣類スチーマー。2022年モデルは以前よりもさらに水の容量タンクが増えた上に、スチーム噴射力が強いモードもあってより使いやすくなりました。50gほど軽くなったのも嬉しいポイントです。
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谷崎彩
スタイリスト。1998年から代官山の隅っこで小さな輸入洋品店を開業。2000年〜2004年くらいまでフランスのインディペンデントマガジン「Purple fashion 」のスタイリスト兼ファッションエディターを務める。