2023年8月5日(土)まで、天王洲の「マキギャラリー」にて、ユージーン・スタジオ/寒川裕人さんのコレクション展「想像の力 Part1|3」が開催中。都心から車で1時間くらいの場所にある700㎡のアトリエ「EUGENE STUDIO Atelier iii」も予約制で特別同時公開している。
天王洲・マキギャラリーでユージーン・スタジオのコレクション展が開催
寒川裕人が導く“想像の力”とは

現代アートを手がける寒川裕人さんのユージーン・スタジオ。2022年には「東京都現代美術館」での大規模個展『ユージーン・スタジオ 新しい海』が話題に。作品をひと目見ようとする観客で、長蛇の列ができたのも記憶に新しい。
今回の会場は、天王洲の「マキギャラリー」。複数年にわたりギャラリーによって開催されるこのプロジェクト。“想像の力”と題された展覧会は3期に分けられており、その幕開けとなる第1章がスタートした。
「写真や映像で見られるものは増えたけど、体験することは全く違う強さを持っています。実際に行ってみないとわからない、言葉では伝えきれない景色があるはずです」という寒川さんは、絵画だけでなくインスタレーションなど幅広い表現方法を扱う。それぞれの作品についての話をきいた。
ここに写真はないが、本展にはもう一つ、ユニークな展示がある。一人ずつしか入室できないその部屋は、真っ暗。通路を抜け、床に敷かれた絨毯を頼りに進むと『想像 #1 man』という“人”の彫像がたたずんでいる。手で触れてもよく、表面を撫でるなどして視覚以外でも作品を感じることができるのだ。時計やスマートフォンを持ち込めないので、中で過ごす時間も感覚に身を委ねるしかない。5分で出てくる人もいれば数十分滞在する人もいるのだとか。「ぼくは、自分の作品の10%くらいしか理解できていない方がおもしろいと思っていて、それよりも、だれもが入り込める余地があることの方が重要」と話す寒川さん自身も暗闇の中で制作していたため、未だに完成した形を見ていない。それどころか、ギャラリーまで運んできたスタッフや所有者でさえ、どのような姿なのかは知らない。つまり誰も一度も目にしたことがないという。

そして、今回、寒川さんの制作現場であるアトリエも特別に同時公開している。
「都心から車で1時間ほどの緑豊かな場所に、3年前にアトリエを構えました。もとは木工工場だった建物を自分たちで改装しています。過去の展覧会で用いた床材を再利用したり、真鍮の作品の実験で使ったあまりを扉の取手に配したり、いたるところに過去の作品をリユースしたものがあります。誰かに見せるために作った空間ではないのですが、徐々に問い合わせが増え、海外より訪れるコレクターやミュージシャンなどが増えました。もしかしたら新しい体験なのかもしれないと、ぼくがいない日には、一般の方に公開する機会を設けることにしました」
「20代前半から、“想像力”さえあればいろいろ解決できる社会の問題もあるのではないかと感じていました。瞬時に判断することが、いろんな問題を引き起こしている気がします。どうしても防げないこともあるけれど、少し想像を膨らませれば身近なところから変わっていくのではないかと。本展で作品を通して“想像する”という頭の使い方の入口になればいいなと思っています」と、展示のテーマには強い思いが込められている。
五感を精一杯働かせて、目の前の作品に陶酔すれば、新たな解釈や感覚に出合えるのではないだろうか。
ℹ️
【ユージーン・スタジオ/ 寒川裕人 想像の力 Part 1|3】
「MAKI Gallery (東京・天王洲)」
会期: 開催中〜2023 年 8月5日 (土)
開館時間: 11:30〜18:00
住所: 東京都品川区東品川 1 -33-10 TERADA ART COMPLEX I
休館日: 日・月曜日*7月4日(火)
料金: 無料
*予約不要
ℹ️
「EUGENE STUDIO Atelier iii」
会期: 開催中〜2023 年 8月12日 (土)
料金:事前予約制 / 1グループ ¥5,000
*システム手数料を除き全額を寄付 (トルコ・シリア大地震に関する自然災害緊急募金 )
*一般枠は下記サイトにて事前予約受付中。
*東京都心より軽井沢方面へ車で 1時間強。住所は非公開のため、申し込みの予約完了後に住所を送付。
Photo: Miyu Yasuda Text: Nico Araki