「制作中に噛むガムはフルーツ味だったり、強烈なミント味だったり。子どもたちがまだ噛めないのに欲しがって買ったものだから、味がバラバラなんです」。そう笑いながら話すのは、東京で個展『Remember That Time When What』を開催中のジュリア・チャンさん。展示されている抽象画にはあらゆる色と形が躍動し、観ているだけで心がはずむ。身の回りから着想を得るという、その作品作りについて聞いた。
💭INTERVIEW
ジュリア・チャンがアートで問い続ける「想像上の境界線」
個展『Remember That Time When What』インタビュー

──ジュリアさんの絵画作品といえば、花びらのようなマークの群れが特徴的です。それぞれどのように描いているんでしょうか?
手描きしています。
──版画やステンシルみたいな方法ではなく?
はい。
──こうして直接作品を前にしても、迷いなく正確に描かれているように見えるので、びっくりしました。
自分としては、よく見れば一つ一つみんな違うし、細かなミスも結構あるんです。でもそれって自然なことですよね。人間の手は完璧じゃないから。
──構図や配色は手を動かしながら考えていくんでしょうか? それともある程度はイメージしてから描き始めますか?
事前にざっくりしたアイデアはあります。たとえば、圧がかかったような濃密な感じとか、余白のある開放的な感じとか、そのイメージをもとに描き進めます。厳密にフローが決まっているわけじゃないけど、たとえば絵の具を注いで、一つの形ができたとします。すると、その形が何かにぶつかりたいと感じているように思える。それで、周りに別の色や、時には同じ色を注いでみたりして、新しくどんな形が生まれるかを観察するんです。すべてのステップが、次にどうするかの判断につながっていきます。

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Photo: Satomi Yamauchi Edit&Text: Milli Kawaguchi