宮﨑駿監督スタジオジブリ最新作『君たちはどう生きるか』の主題歌「地球儀」を発表した米津玄師。今作は、米津玄師名義の記念すべき100曲目でもある。4年という長い時間をかけて、じっくりと映画に向き合い、ブラッシュアップし続けた楽曲は、ひとつの集大成とも言える。彼が幼少期から多大な影響を受けてきた宮﨑監督の創作に対する姿勢と、今回の制作について話を聞いた。後編では、デモ音源の制作から完成までを伺う。
米津玄師が最新曲「地球儀」で辿り着いた、新たな地平(後編)
「光栄であると感じることは、もうこれ以上ないと思う」
──今まで数多くのタイアップやリクエストに応じた曲の制作がありましたが、今回は過去の曲とものすごく違いますよね。大きな影響を受けた方の映画主題歌を担当するという経験はなかなかないと思います。
これから先の人生、どうなるかわからないですけど、“光栄である”と感じることは、もうこれ以上ないだろうなと思うんですよね。でも、光栄であるとはどういうことかと考えたら、やっぱり自分の今までの人生とか、多感だった幼少期だとか、そういうパーソナリティから導き出される感情だと思うんです。たとえば、どこかの国の大統領にあなたは素晴らしいと褒めていただいたとしても、ありがたいなと思う可能性はあるけれど、しかし光栄かと思うと、そうではない気がします。というのも、自分がその人のもとで生きてきたわけじゃないから。そういう意味で、この映画に関わって、宮﨑さんといろいろな言葉を交わして、この曲を作れた現状は、これ以上ない光栄だと思っています。それは、彼の映画を見続けてきたし、ずっと私淑して生きてきたし。この4年間は、光栄だなと思うと同時に、自分の音楽家としての人生はこれで終わりなんじゃないか。そういう両極端な感情がずっと渦巻きながら過ごしてきた気がしますね。
──宮﨑監督に初めて曲をお聞かせしたときのことは覚えていますか?
プリレコーディングしたデモ音源をCDに焼いて、実際に聴いていただくという日があって。俺もその場に行かなきゃいけないのかと、死刑台に上るような気持ちで赴きました。テーブルを囲んでスピーカーから流れるこの曲を聴いていただいている最中、目の前で宮﨑さんが、涙を流されたんです。このときの景色は、この4年間の中で、一番印象に残っている記憶ですね。一生忘れずに抱えて生きていくんだろうなと思います。これから先、この曲を聴いてくれる人にもさまざまな感想があると思うし、全然よくないと言われるかもしれない。そういう事態に陥ったとしても、宮﨑さんが泣いてくれていたという事実があり、その姿を目にした体験があるだけで、もうお釣りがいくらでも来ます。
──写真集に収められている、監督と米津さんがお互い深々とお辞儀をされているカットがその瞬間ですか?
はい。曲を聴き終わってすぐに宮﨑さんがお辞儀されて、あわてて自分もそうしました。
──そこで曲のイメージは固まったのでしょうか?
マイナーチェンジというか、曲の長さや楽器が変わることはありましたが、基本的にはこのときの形です。
Photo: Kazuhei Kimura Text: Mika Koyanagi