メキシコの麻薬カルテルのボスが、性別適合手術によって女性となり、新しい人生へと歩みだす。その姿が、周りの女性たちの運命をも大きく変えていく——。壮大でサスペンスフルな物語をミュージカル仕立てで解き放つ、注目のサンローラン プロダクション制作による映画『エミリア・ペレス』(3月28日より公開)。ジェンダーを超えるキャラクター。ジャンルに囚われないフィルムメイキング。「一義的でなく複雑でいるさまに惹かれる」と、ジャック・オーディアール監督は語る。
麻薬王がカトリーヌ・ドヌーヴに変貌!?『エミリア・ペレス』が映す自由の形
ジャック・オーディアール監督にインタビュー

——今回、なぜミュージカルというジャンルに挑戦しましたか?
ミュージカルという呼び方が、この映画に合っているかはわかりません。メロドラマというか、プチオペラというか。もちろん、フィルムノワール(犯罪映画)の側面もあります。これまでもジャンル映画に近い作品を撮ってきたし、そこまで意識していたわけではありません。ちなみに長編第2作の『つつましき詐欺師』(96)の時も、もともと作曲家のアレクサンドル・デスプラとともに、ブレヒト風のプチオペラを作りたいと考えていました。お互いに怠惰で、実現しなかったのですが(笑)。それから30年近く経ち、改めてプチオペラをやりたくなった。ただそれだけです。
Text&Edit_Milli Kawaguchi