しばらく袖を通していなくても、使い込んでボロボロになっても 時が経っても手放せずにいる、思い出が詰まった大切なもの。 今につながるストーリーとともに紹介する。
🤓COLUMN
フォトグラファー・岡﨑果歩の「捨てられない宝物」
留学先から連れて帰った 戦友のようなジャケット

留学先から連れて帰った 戦友のようなジャケット
ジャケットとの出合いは、岡﨑さんがロンドンの大学でファッションの勉強をしていた学生時代のこと。
「ブリックレーンというエリアで毎週末マーケットが開かれていて、よく遊びに行きました。30ポンドという手頃さに惹かれましたね」
衝動買いをしたものの、しばらくの間はクローゼットに眠っていたという。
「帰国後フォトグラファーのアシスタントを始めた頃、仕事着に適した薄手のアウターを探している時に思い出し、久しぶりに袖を通しました。撮影中は、朝は寒くても動き始めると冬でも日中は暑くなるので、温度調整をしやすい服が重宝するんです。扱いやすい薄さと中にダウンベストも仕込める大きなサイズで、意外にも年中いけます」
ひと際目を引くのはデザインされたようなショルダー部分のダメージだ。
「右肩にカメラバッグをかける習慣で、自然にここまで擦り切れました。初めて〝服も壊れるの!?〟と焦るぐらい。だからこれからは丁寧に着たいです」
晴れてフォトグラファーとして独立し、数年経ったある日のこと。
「久しぶりに師匠に会ったら〝まだその服着てるの?〟と言われました。指摘されるぐらい毎日身につけていたようで、少し恥ずかしかったです(笑)」
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岡﨑果歩
おかざき・かほ
1993年岐阜県生まれ。フォトグラファー。奥山由之に師事。2023年6月、東京・渋谷のギャラリー 「True Romance Art Projects」 にて写真展を開催予定。
Photo:Kiyotaka Hamamura Text:GINZA