南アジアにルーツを持つ、シャララジマさん。見た目で容易に規定されることなく、ボーダレスな存在でありたいと、髪を金髪に染め、カラーコンタクトをつけてモデル活動をしている。“常識”を鵜呑みにしない彼女のアンテナにひっかかった日々のあれこれをつづった連載エッセイ。
前回記事▶︎「vol.8 ヨーロッパ紀行〜ドクメンタ編〜」はこちら
シャラ ラジマ「オフレコの物語」vol.9
南アジアにルーツを持つ、シャララジマさん。見た目で容易に規定されることなく、ボーダレスな存在でありたいと、髪を金髪に染め、カラーコンタクトをつけてモデル活動をしている。“常識”を鵜呑みにしない彼女のアンテナにひっかかった日々のあれこれをつづった連載エッセイ。
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私はついに発見してしまった、と思った。ケミカル・ブラザーズの歌詞を。
ヒップホップ、というかブラックミュージック以外で好きなミュージシャンは誰かと聞かれたら必ず答える二組のアーティストがいる。それはどちらも90年代のUKで活躍した、プライマル・スクリームとケミカル・ブラザーズだ。私は基本的にUKの音楽に染まっていると思う。プライマル・スクリームに関しては、日本にあんまり来る機会がないのと本人たちがドラッグでヘロヘロのためライブは演奏自体を楽しむというより、存在を喜ぶものだと大人からは聞いている。
もう一つの好きな方が、ケミカル・ブラザーズ(以下、たまにケミカル)だ。昔から日本には定期的に来日していて、私も2019年のフジロックで初めて生で見ることができた。グリーンステージのヘッドライナーだった彼らの会場は入場規制がかかるほどの熱気で、私は始まる前から最前から7列目で場所を取っている気合いを見せていた。音を遮るものが一つもない広い自然の中で聴く音楽は別格だった。自分より何倍も大きいスピーカーから降りかかる音楽が私を包む。ケミカル・ブラザーズの音楽は、さまざまな種類のシンセサイザーを使ったテクノをベースとしつつも、単調でなくかなりメロディアス。今日ではむしろDJがかけているような音色を、彼らはひとつひとつ音を出してライブしている。そんな彼らの単独公演が2月にあった。会場である東京ガーデンシアターは初めて行くし、そもそも屋内って屋外で聴くよりも良いものなのか?と懐疑的に思っていた。
ケミカル・ブラザーズは去年衝撃の新アルバムを出した。これまで、テクノで無骨で、機械的で冷たい印象だったのが、ハウスミュージックを取り入れたアルバムを作っていた。数年前から世界的にダンス、クラブミュージック界ではハウスが広く流行っていた流れを組んで、ケミカルなりの有機的なサウンドを取り入れたトラックは、彼ららしいオリジナリティのある音楽で私にぶっ刺さっていた。今回はきっと新アルバムを中心としたツアーになるだろうと思っていたので、単独公演は逃すわけにはいかなかった。
私のラジオ番組であるbayFMの「シャララ島」では、ライブを楽しみにして「MAH」という曲を電波に流して届けさせてもらった。この曲は比較的最近のもので、わかりやすくジャングルや民族っぽい音がテクノベースのトラックに入っているのが印象的で好きだった。私はとにかく民族音楽、というか音色?に弱い。民族的なエステティックは、勝手に自分を肯定された気がしてしまうからだ。
Photo&Text_Sharar Lazima