「この人が主役のドラマは絶対に面白い」。石原さとみの求心力ある演技には、ついそう断言したくなる。4月9日より、主演ドラマ『Destiny』がスタート(テレビ朝日火曜よる9時〜 *初回拡大SP)。最近、作品に向かうモードや目指す俳優像がはっきり切り替わったという。今作のことやこれからのキャリアについて、ワクワクとして情熱に満ちた胸の内を聞いた。
石原さとみ「美しくなることに疲れた」その先で
ドラマ『Destiny』インタビュー
──今回演じるのは、横浜地方検察庁の検事・奏です。同じく検事だった父の死の真相を巡るサスペンスでありながら、愛の物語でもある今作の見どころをぜひ教えてください。
映像を観たら、まるで映画みたいでした。都心から少し離れたロケーションだったり、カメラアングルだったり、照明だったり。スタッフのみなさんが妥協しない、各部署のこだわりが詰まった現場だったからこそ、私たちキャストのお芝居もより美しく感じられる気がしました。サスペンスとしては、全話を通して面白く考察してもらえると嬉しいです。ラブストーリーの部分でも、12年前の大学時代を描く過去パートと、検事として働く現在パートとを行き来しながら、最後まで奏が運命に翻弄され、揺れ動いていく感じをぜひ楽しんで観てもらえたらと。
──検事としての“強さ”もありながら、思いがけない展開の連続に戸惑う“繊細さ”も併せ持つ複雑な役ですが、苦労はなかったですか?
そこは脚本家の吉田紀子さんがとても丁寧に書いてくださったので。12年前の長野で、奏を含む大学の法学部の同級生5人組が一気に仲良くなり、友情が頂点に達した後、ある事件によってパンッと一瞬で弾けてしまう。奏はその喪失感でもう生きていられないくらいに絶望するんですが、新たな出会いで心がまた温かくなっていく。ようやく人間らしさを取り戻し、大人になって自信もついてきて。
検事という、取り調べ相手の人生がかかった職業に就いたからこその、責任感も正義感も当然持ち合わせています。でもそんな時、亀梨和也さん演じる大学時代の初恋の相手・真樹と再会し、当時の感情がブワッとよみがえり、弱い部分が刺激されてしまう。そこで周りのために強くあろうと、翻弄されないように抗おうとする姿が、かえって人間らしくていいなと感じました。
──亀梨さんとは初共演ですが、現場での印象深いエピソードはありますか?
大学時代の友情関係は、作品全体の原動力になる重要な要素です。その撮影を引っ張ってくださったのは、確実に亀梨さんでした。場を盛り上げたり、笑いで和ませてくれたり。もうずっと楽しかった。5人(*二人のほか、宮澤エマ、田中みな実、矢本悠馬)で夕陽を眺めるシーンがあるんですけど、待ち時間に、劇中に登場する車に乗ったまま、みんなで亀梨さんにいろんな曲をリクエストして、たくさん歌っていただいて。その時に、SMAPさんの「オレンジ」を歌詞も見ずに歌い上げてくださったんです。もう、大感動。そんな幸福な時間をふまえた上で撮影に臨み、私自身、大好きなシーンになりました。とてもいい思い出です。
──石原さんは撮影現場においてご自身でメイクをすることでも有名ですが、今回も?
はい、自分でしました。12年間にわたる物語ですし、特に1話はメイクと髪形とで、段階を経なければいけなかった。過去パートの奏は、最初は基本的にすっぴんで眼鏡をかけて、髪はボサボサ。そこから恋に落ちるシーンや、「きれいになったね」と言われるシーンがあり、その前後でだんだんと変わっていきます。
まず髪を耳にかける。ちょっとだけ色のついたリップを塗る。ビューラーでまつ毛を上げる。眼鏡からコンタクトにする。肌は、マットめにパウダーで押さえるシーンと、つやを出すシーンとを意図的に分けました。あと現在に至るまでに、前髪にも細かい変化をつけています。そういう違いをメイクさんとも話し合いながら、台本にバーっとすごく細かくメモしていて、毎日車の中で、「あれ、今日はなんのシーンだっけ? どうしようか?」って焦ったりしながら(笑)。
──ヘアメイクを練ることが役作りとも密接に関わっていそうですね。
メイクや髪形で、やっぱり気持ちが変わるじゃないですか。今回なら特に前髪のあるなしは、それによって視界の広さが変わるので。検事になった奏がなぜ額を出すようになるかって、心境の変化が大きいと思うんです。検事としてスタートを切ったという自信もありますしね。それに若い女性だからと、取り調べ相手になめられてもいけない。仕事中のシーンのメイクは、眉毛を中心にわりとキツめに仕上げています。服装もそうです。
──潔いショートヘアも、奏のパーソナリティと合っています。
実は産後1作目として、この前に撮影していた映画『ミッシング』ではロングだったんですけど、娘が失踪して憔悴しきった母親を演じていたので、髪を傷めたくて、わざとボディシャンプーで洗っていたんです。傷んだ部分を一回切らないと成立しないので、奏はショートだという前提で考えていました。
Photo_Koichi Tanoue Styling_Keiko Miyazawa (WHITNEY) Text& Edit_Milli Kawaguchi