「かっこいいってどんな人なのか」を知りたくて、フローリストの河村敏栄さんが今日はあの人に会いに行く。その日の花を携えて。
その日の花。vol.8 写真家/映画監督・若木信吾さんへ

─── 最近、自由でいるとか自由にしたいとかって言葉が、すごくチープっていうか嘘っぽく聞こえる。自由って嘘でしょ?みたいなのが浸透してる感じがあって
その中で本当に自由を感じられる人がいたら、かっこいいなと思う。今の時代だったらね。まさにそれ。
写真家の彼には「誰の中にも必ずかっこいいところがある」という確信があって、そういうことは私よりもずっと時間を割いて考えてきた人だった。たとえばマイノリティやフェミニズムについて、どんな質問をしても他者への関心の深さと優しさがビシビシと伝わってきた。嘘っぽくは全然なかった。私はそれがうれしくて、社会で活躍する男の人がみんな若木さんみたいだったらいいのになと思う。「しょせん人は自分の枠からは出られないし、知ってる範囲でしか動けない。だったら周りを気にせずにやりたいことは全部やりたい」。自分の欲望に対しても恥ずかしがらずまっすぐ向き合えるのは、彼がとても真面目な人だからだ。マイナー上等!正しいと思うことは言うし、やりたいことはやる。彼との対話はまさに異文化交流で、大きな風穴を開けてもらった。みんな本当はもっとやっちゃっていいのだ。
今月の花
彼女と作家たちをイメージしたマニアックなアレンジメント。アンスリウムのホワイトバージンとロックセット、紫の小花がついたエアプランツのチランジア・キアネア、黄色い産毛がドキドキのヘリコニア・ショーグン。ひょっこり顔を出しているのはひょうたんです。中でも巨大なアロカシアの葉が放つ夏の美が圧倒的で、枯れる姿が想像できない。
花と文 河村敏栄 写真 松原博子
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若木信吾
写真家、映画監督。1971年静岡県浜松市生まれ。ニューヨークロチェスター工科大学写真学科卒業。雑誌、広告など幅広い分野で活動中。浜松市の書店「BOOKS AND PRINTS」のオーナー。映画の撮影、監督作品に『星影のワルツ』(07)、『トーテム Song for home』(09)、『白河夜船』(15)がある。昨年絵本レーベル「若芽舎」を立ち上げ、ミニ絵本シリーズの刊行をスタート。www.shingowakagi.net
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河村敏栄
オーナーを務める東京・代々木上原の「MAG BY LOUISE」では、花のワークショップやレッスンをメインに、読書会などユニークなコンセプトの活動を行う。2018年にインディペンデント雑誌『FLOWER magazine』を創刊。www.louise-flower.com
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松原博子
京都府生まれ。雑誌、カタログなどで活動。www.hirokomatsubara.com