1986年に生きるおじさんが2024年にタイムスリップ!昭和の常識が受け入れられなくなっている世界で奮闘する姿を描く『不適切にもほどがある!』(TBS金曜夜10時〜)。宮藤官九郎脚本、阿部サダヲ主演の期待のドラマ、第1話を、ドラマを愛するライター・釣木文恵と、イラストレーターのオカヤイヅミが振り返ります。
「幸せだって叫ぶオレの価値観も認めてくれよ」
1986年に生きるおじさんが2024年にタイムスリップ!昭和の常識が受け入れられなくなっている世界で奮闘する姿を描く『不適切にもほどがある!』(TBS金曜夜10時〜)。宮藤官九郎脚本、阿部サダヲ主演の期待のドラマ、第1話を、ドラマを愛するライター・釣木文恵と、イラストレーターのオカヤイヅミが振り返ります。
「この作品には 不適切な台詞や喫煙シーンが含まれていますが
時代による言語表現や文化・風俗の変遷を描く本ドラマの特性に鑑み
1986年当時の表現をあえて使用して放送します」
オープニングで画面いっぱいに映し出された文言が消えるやいなや、ブス、チビ、ハゲと、「コンプライアンス」のもと自粛されがちな単語が飛び交う。その発言の出どころは、寝起きドッキリよろしく「写ルンです」で写真を撮る父親と、それに寝ぼけながらも反発する娘だ。ところかまわずタバコを吸い、勤め先の中学校では女性教師に当然のようにセクハラ発言をかます今作の主人公・地獄のオガワこと小川市郎(阿部サダヲ)は典型的な昭和のおじさん。娘の純子(河合優実)は、何かとマッチ=近藤真彦の歌詞を引用し、出で立ちも「ハイティーン・ブギ」に影響されまくったようすのムッチ先輩(磯村勇斗)といい仲。
脚本の宮藤官九郎と主演の阿部サダヲは、ともに1970年生まれ。彼らにとって1986年は16歳、青春真っ盛りの時代だ。2人それぞれ、描くのも演じるのもお手の物とばかりに昭和の世界がいきいきと描写されていく。ミヤコ蝶々のCM、「ほとんどビョーキ」、電話機にかかったレースのカバー……。懐かしいフレーズやアイテムが怒涛のように登場する冒頭はまだまだ楽しいばかりだ。
ところが、帰り道で市郎がバスに乗ったところから事情が変わってくる。当たり前のようにタバコを吸っている市郎を非難する者、恐がる者。仕方なくバスを降りた市郎が見かけるのは電子タバコ、スマホ、電動キックボード、東京スカイツリー。2024年において、市郎の行動はまさに「不適切にもほどがある」!
Edit_Yukiko Arai