Netflix『離婚しようよ』(大石静との共同脚本)、Disney+『季節のない街』(企画、監督、脚本)と、宮藤官九郎が手掛けた作品が立て続けに配信されている。地上波でも映画でもない場所へと広がる宮藤作品について、ドラマを愛するライター・釣木文恵が前後編レビューで考察します。
宮藤官九郎の配信ドラマが、コンプライアンスを超える
『離婚しようよ』『季節のない街』と立て続けに発表された2023年現在の表現
宮藤官九郎配信ドラマ考察/前編
新しい試みを
味わえる二作
『離婚しようよ』は二世議員・東海林大志(松坂桃李)と国民的女優・黒澤ゆい(仲里依紗)夫妻の物語。互いに離婚したいと願いつつ、政治家としての世間体や女優のイメージの問題も絡み合ってなかなか簡単にはできない、というコメディ。ゆいの代表作が『あまちゃん』ならぬ『巫女ちゃん』だったり、ゆいの弁護士・石原ヘンリーKとして古田新太が活躍していたりと、“宮藤色”は随所に。その一方で主に大石が担当したという、ゆいと不倫相手・恭二(錦戸亮)とのシーンがぐっとシリアスで湿度の高いものになっていて、共同脚本の面白さが味わえる。
『季節のない街』は宮藤が最も好きだという映画『どですかでん』(黒澤明監督 70年)の原作となった山本周五郎の小説をもとに、設定を現代に移して作ったもの。宮藤自ら「紛れもなく一番やりたかった作品」「自分の第二章が始まる」とコメントするほど思い入れのある今作は、原作の終戦直後のバラックを、大災害からしばらく経った仮設住宅に置き換え、そこに暮らす人々のようすを描く群像劇だ。
2023年、立て続けに配信されたこれらのドラマは、これまでとは違う形で宮藤作品を楽しめるものとなっていた。
Edit: Yukiko Arai