日本にもファンの多い、中国のロウ・イエ監督の新作映画『サタデー・フィクション』。コン・リー主演、オダギリジョー共演による、太平洋戦争開戦前夜の上海租界を舞台にしたスパイ映画だ。実際の歴史的建造物でのロケーションと、モノクロ映像でシックに描かれる、騙し合いの物語。しかし真に見せたかったのはむしろ、たとえ敵同士でも、気持ちが偶然通い合うこともあるという、その瞬間だったという。
💭INTERVIEW
映画『サタデー・フィクション』ロウ・イエ監督インタビュー
「私たちが生きているこの世界では、不意にお互いの心が通い合う瞬間もあると思うんです」

──監督は、ご自身の妻でもある脚本家のマー・インリーさんとこれまでも何度か組んでいると思いますが、執筆中に内容について相談し合うこともあるんでしょうか?
もう、ずっと(笑)。書き始める前、書いている最中もそうだし、撮影に入ってからもまだ議論が続きます。最終的に映画が出来上がるまで、意見を戦わせていますね。
──今回の映画において、特に議論が白熱した部分はどこですか?
やはり、劇中劇パートを含めた全体の構成についてです。原作は、中国の女性作家ホン・インの小説『上海の死』ですが、マー・インリーは原作小説の劇中劇の内容を、日本の横光利一の小説『上海』の一部に置き換えることで、映画として成立するテキストに作り変えました。序盤はそうでもないんだけれど、後半では、「現実の現実」と「劇中の現実」の区別をあえてはっきりさせておらず、そこをどう構築していくかは、かなり話し合いました。
撮影において、もちろん撮っているこっちとしては、基本的に「これは現実のこと」「これは劇中劇のこと」というふうに意識して分けています。けれど、両者がシームレスに交わっていくシーンでは、私たちスタッフも役者たちも、今は「どっち」なのかわからないままに撮っていたし、演じていた気がします。
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Text & Edit_Milli Kawaguchi