ミヒャエル・ハネケに師事し、オーストリア映画界を牽引するジェシカ・ハウスナー監督。今年のカンヌ国際映画祭にてコンペティション部門にノミネートされた最新作『クラブゼロ』(12月6日公開)で、モチーフとして取り上げるのは、極端な少食をすすめる食事法だ。名門校を舞台に、栄養学のクラスが次第にカルト化していくさまを、あえてスタイリッシュに描いたダークな問題作。監督はそこに、今のヨーロッパ社会を投影しているという。
💭INTERVIEW
映画『クラブゼロ』ジェシカ・ハウスナー監督にインタビュー
「巣の中のハチ」のような制服――衣裳が象徴する集団心理とカルト
——物語は、栄養学の教師ノヴァク(ミア・ワシコウスカ)が名門校に赴任するところからはじまります。彼女が生徒たちに指導する「意識的な食事/conscious eating」は、少食は健康的であり、社会の束縛から自分を解放することができると説く食事法です。ノヴァクのもと、クラスはだんだんカルト化していきます。この流れについて、何か事前リサーチはしましたか?
あるカルトのメンバーだった人たちに何人か会い、教祖との経験について聞きました。というのもミアに必要だったのは、教祖の心理を理解することだったからです。
——「この食事法を習得すれば世界が滅びる時、生存者になれる」といった誘い文句に、生徒が心酔していく様子など、リアルな描写が恐ろしかったです。
カルトは宗教にかなり似ていると思います。私が過去に撮った映画『ルルドの泉で』(09)でも、救いへの切望が描いていて。死にゆく人々は生き延びたくて、神が奇蹟を起こしてくれることを望みます。充実した人生を送りたいとか、意中の相手と結ばれたいとか、そういう願いはすべての人が持っているもの。そして多くのカルトは、そのような救いと充足を約束するんです。
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Photo_Wataru Kitao Text&Edit_Milli Kawaguchi