東京と一口に言っても、見せる表情はバラバラ。人懐こいカフェ、カルチャーが凝縮した土地、エッジの効いた個人店、プロが通う問屋街。4人の思い出が詰まった場所を訪ねました。#ここが私の東京
漫画家・瀧波ユカリの東京、思い出が詰まった場所。「アメヤ横丁周辺」
漫画家・瀧波ユカリ
↓
アメヤ横丁周辺(上野〜御徒町)

「自分向けの場所が好きではないんです。若者だから渋谷、原宿とお膳立てされている街は落ち着かない。そういった意味で上野は私向けではないから心地いいですね」
推しは、上野界隈の散歩。
「おすすめのルートは、東大前にある『River Coffee』でテイクアウトし、『健康と医学の博物館』を30分ぐらいかけて見学、品ぞろえがいい『古書ほうろう』で本を買い、上野公園の不忍池辯天堂にお参り。ゴールはアメ横の『平成福順』。このお店はオープンエアの“外”中華。何を食べてもおいしいんです」
連載中の漫画『わたしたちは無痛恋愛がしたい』でも銀座から浅草寺まで歩く細かな描写が印象的だった。散歩は昔から好きだった?
「40代に入ってから楽しむようになりました。というのも、若い頃は訪れた先で何か印象に残ることをしなくては、と強迫観念があった。自分なりの“夢の東京地図”があり、渋谷や原宿に行っては何かあるはずと思っても、そんなわけはなくて。年齢を重ね、自分の好みと選び方がわかってきたと思います。上野は、美術館、公園、デパート、アメ横……文化と自然と食が全部ある。歩いてコーヒー飲んでデパートに寄るだけでOK、とプレッシャーがない。それと昔なじみの街に行ってセンチメンタルになるのが嫌なんですよね。その点、上野はおじいさんが公園で和んでいるのをよく目にするので、私がおばあさんになっても希望があるなと感じています」
ℹ️
アメヤ横丁周辺(上野〜御徒町)
JR上野駅と御徒町駅を結ぶ全長約500メートルに約400店がひしめく巨大商店街。年末の賑わいは風物詩。ランドマークのひとつは、瀧波さんも地下食品街で中華食材を求めるという、アメ横センタービル。
🗣️
瀧波ユカリ
たきなみ・ゆかり>> 1980年札幌市生まれ。2004年『臨死!! 江古田ちゃん』で漫画家デビュー。『わたしたちは無痛恋愛がしたい 〜鍵垢女子と星屑男子とフェミおじさん〜』連載中。コメンテーターやラジオパーソナリティとしても活躍。
Photo_Naoto Usami Text_Mika Koyanagi