平成元年生まれのオタク女子4人組からなるグループ「劇団雌猫」が、オタク心を持つ読者の日頃の悩みをズバっと解決。応募フォームに集まったお悩みに、メンバーである、かんさん、ひらりささん、もぐもぐさん、ユッケさんが月替わりで回答します。前回のお悩みはVol.32 オタク友達との距離感、どう保てばよい?
神作家に出会い、自信喪失。二次創作のモチベ、どう保てばいい?【劇団雌猫 愛と浪費のおなやみ劇場 vol.33】
質問
今月の悪友:しろみさん
劇団雌猫の皆さま、初めまして。いつも楽しく連載を拝読しております。私は二次創作をしているのですが、あるときあまりに理想的な作品を書かれる作家さんに出会ってしまい、自信を喪失してしまいました。それ以降、その作家さんのことを思い出すだけで不安になり、二次創作をするのも、誰かの作品を見るのも難しい状態です。書きたいネタはたくさんありますし、同人誌を作るのが夢なので、二次創作を続けたい気持ちはあります。
自分が好きなものを書くのがいちばんで、他人のレベルを気にしても仕方ない、とも思います。ですが、書きたい気持ちと、あの作家さんほどのものは書けない、という気持ちの板挟みになってしまい、辛いです。このような状態をどのように切り抜ければいいでしょうか。アドバイスをいただければ幸いです。
劇団雌猫からのアドバイス
今月の回答者: ひらりささん、もぐもぐさん
もぐもぐ 今回はもぐもぐとひらりさでお送りします!
ひらりさ 創作に関するお悩みということだけど、作家さんの人生相談コーナーじゃなく、我々で大丈夫なのだろうか?
もぐもぐ それはその通りすぎる(笑)。でもこのお悩み、共感する人結構いそうだね〜。二次創作、ビビるくらい上手い人いるもんね。
ひらりさ 私からすると、そこまで自分の性癖にハマって筆力もある作家さんってそうそう出会えないから、しろみさんがあまりにも理想の書き手に出会えているのは正直羨ましい。一体なんのジャンルなんだ……。もぐもぐさんは二次創作は読む専?
(読む専:ネット上の創作や同人誌を「読む専門」の人。描いたり書いたりしない側という意味)
もぐもぐ 私はほぼ読む専で書いたことあるのはちょっとだけ。少ないよ、10作くらいかな?
ひらりさ 結構書いてる!
もぐもぐ 「SHIROBAKO」にあまりにハマりすぎていた時に情熱を発散したくて、誰にも言わずpixivにあげてた。そして誰にも言わずこっそり消した(笑)
ひらりさ それって、もぐもぐさんはどういう衝動で書いたの? 二次創作のモチベーションって、いろんな種類のものが混ざり合っている気がして。
もぐもぐ 混ざり合っている、というと?
ひらりさ 私もいくつかの作品にハマって二次創作を書いたことがあるけど、はじめは単純に自分の萌えがほとばしっていても、続けていくと相談者さんみたいに周りと切磋琢磨したくなったり、比べて落ち込んだりとかするようになるわけじゃない? あとは、読者が読んでくれるのが嬉しいから、という理由も出てきたり。
もぐもぐ 最初は勢いでスタートできてもね。私は原作マンガやアニメを見て昂ぶった時もあるし、みんなの二次創作を読んでて「私はここはこういう解釈で書きます!!」ってたたきつけたく(笑)なる時もある!
ひらりさ 衝動のみで創作していた時よりも色々な楽しみができて、それは同人活動とか創作活動の豊かさの一つだと思うのだけど、それでつらくなるのもわかる。私の場合は数千字程度の予告編みたいな文章は書けるんだけどそのあとが続かなくてだけあげて、風呂敷をたたまずに放置しちゃうことが多かったかな。
もぐもぐ それはわかる! ゼロから何かを生み出して完結させて、そのうえ世界に発表している人、それだけでマジですごいよね。しろみさんは「理想的な作品」に打ちのめされてるけど、最近の“同人しんどくなるルート”としては、いいね数とかリアクションで比べちゃうケースもありそう。
ひらりさ うぅ、つらい…。二次創作に限らず、私たちも物を作ったり書いたりしているわけだけど、もぐもぐさんもしろみさんみたいな気持ちになることあった?
もぐもぐ う〜ん、どうだろう。ひらりささんは?
ひらりさ 私はあるよ。でも、正直言うと「筆を折る」レベルまで極めたことがないかも。創作に限らず「自分より上手い人がいるし…」と思って無意識に諦めていることが多いなと最近気づいた。
もぐもぐ それはやってみる前から、ってこと?
ひらりさ そう。例えば私は歌が下手なんだけど、練習する前から諦めている気がする。まぁ、それほど好きじゃなかっただけかもしれないけど…(笑)。だから、しろみさんみたいに、まずショックを受けられる程度に取り組んでいる時点ですごく偉いな〜と思う。
もぐもぐ 確かにね。同じ場所に立っているからこその悩み。
ひらりさ そうそう。大半の人は、ショックを受けるレベルに至らずに無意識に避けていることが多い気がするから。
もぐもぐ あとはさ、私が仮にしろみさんと同じ村に住んでいる民だったらって考えてみたんだけど。
ひらりさ 同じ作品を愛好する人々の「村」ね(笑)。
もぐもぐ やっぱり村で作物(=二次創作のファンアート)がたくさん穫れる(=読んだり見たりして愛でられる)ほど嬉しいじゃん!? そもそもこの畑を耕してくれているだけでも感謝だわ……。「自信喪失しないで〜!あなたの存在で生かされています!」って隣人として差し入れを贈りたい……。
ひらりさ 本当にそう!あとは、自分のスキルアップという側面でいうと、自分の作品を今一度読み返したり、反応を見返したりするのは大事かも。褒め上手な友達にめちゃくちゃ褒めてもらうのもあり。
もぐもぐ いいね!フィードバックもらって次につなげようって思うと前向きになれるかも。
ひらりさ ライター稼業をしている身からすると、やっぱり上手い人は天性の才能というより、よく読んでよく書いているの。これは二次創作でも同じだと思う。
もぐもぐ 訓練みたいなところは絶対あるよね。
ひらりさ だから、肩の力を抜いて楽しくやる方向にいくのもありだし、「ここまで好きで続けてこられたんだから、これからも楽しみつつ前に進むぞ」って思うのでもいいのかも。
もぐもぐ うんうん。お悩みに「同人誌作るのが夢」って書いているから、二次創作をはじめたてなのかも?と思ったのだけど、インターネットには神絵描きさんとか神字書きさんがめちゃくちゃたくさんいるから、変に劣等感を抱く必要はないと思う。むしろひらりささんが言う通り、そこまでツボな人に出会えてラッキー!くらいに思えた方が良さそう。誰かにとってしろみさんがそうなる可能性だってあるわけだし。
ひらりさ 蓋を開けたらプロだった、みたいな時もあるもんね。
もぐもぐ そうそう。いきなり週刊少年ジャンプを目指さずに教室の隅っこから始めればOK!
ひらりさ 世間に評価される上手さじゃなくても、続けていくと自分が納得できるレベルはもっと上がっていくと思う。そして二次創作なんだから、大事なのは横にいる理想の作家と比べることではなく、自分が原作と向き合うことなのかな〜と思った。周りが気になる時ほど、原作を読み直したり見直したりして原点に立ち返って欲しい!二次創作の場合には、文章の上手さ以外に、「解釈」という武器もあるわけだから。
もぐもぐ 原点に立ち返る、いい言葉じゃん……。「私なんて」って先回りして絶望しちゃう前に、コツコツやっていくと少しずつ自分で上達を感じられると思う。「自分ちょっと上手くなったな!?」と思えると、違う喜びに出会えるかも。
ひらりさ ちなみに、紙で同人誌作ると本当に楽しい!1人買ってくれるだけでも、ものすごく嬉しいもの。
もぐもぐ 本当にそう!!!楽しいよね〜。Twitterでバズるより、1冊売れる方がうれしい、くらいの感覚はある。2022年はぜひ作って欲しいな。
ひらりさ 今は同人イベントが減ってるから機会も少ないかもしれないけど、とにかく一度作ってみてもいいかも。
もぐもぐ 同人誌の装丁も超カッコいいのたくさんあるし、やっぱりレベル高い人の作品がどうしても目に入りがちだけど、まずはできる範囲でね。オンデマンドならそんなに高くないし、モチベーションにしてみよう。
ひらりさ 私も2022年も同人誌作りたいな〜。
もぐもぐ 今は神作家さんを直視するのもつらい現状だと思うけど、ちょっと落ち着いたら逆に熱いファンレターを書いてみるのもいいかも? 好きな人の好きなところを書き出してみると、真似できるところ、参考にできるところを見つけられるかもしれない。あと、未読だったら『私のジャンルに「神」がいます』を読んでみて!(笑)今のしろみさんに似たお気持ちが垣間見えるかもしれない。
ひらりさ できることから、ゆるっとやってみてください〜!
もぐもぐ なんか二次創作やりたくなってきたな。
ひらりさ もぐもぐ先生の文章好きだから新作楽しみにしてます!(圧)
もぐもぐ プレッシャーだわ!
☆次回 かん・ユッケが登場します☆
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