クォーター・ライフ・クライシス。それは、人生の4分の1を過ぎた20代後半〜30代前半のころに訪れがちな、幸福の低迷期を表す言葉だ。28歳の家入レオさんもそれを実感し、揺らいでいる。「自分をごまかさないで、正直に生きたい」家入さん自身が今感じる心の内面を丁寧にすくった連載エッセイ。前回はvol.80マーマレードジャム ニューアルバムについてのインタビューはこちら
家入レオ「言葉は目に見えないファッション」vol.81大真面目に大真面目をしない
vol.81大真面目に大真面目をしない
朝起きてカーテンを開けて、窓の外に青空が広がっているとそのまま散歩に出かけたくなってしまう。顔を洗い歯を磨いたら、何でもない洋服に着替えて。「ねぇ私今からそっちの街までのんびり歩いて行くから。その間に起きて準備しといてもらって。好きなもの何でもカゴに入れて買ってさ。公園でピクニックしない?」そう友達に遠慮なく連絡できたら良いのに。そんな楽しい想像をしながら、昨晩換気のために開けておいたお風呂場の窓を閉め、顔を洗い歯を磨き、鼻うがいをし、洗面台の鏡と玄関の姿見を磨いたら、トイレ掃除をする。
前もって沸かしていたケトルのお湯は私が家事をやっている間に高温から適温になり、胃結腸反射を促すコップ1杯の水を躊躇いなく一気に飲み干した後、サプリを飲み、豆を挽きコーヒーを淹れる間、キッチンの小窓から見える青にラメが混ざる景色にまた心奪われ、どうしてこんな天気のいい日に当たり前のように人は働くのだろう?と、結構大真面目に考えてしまったりする。そして自分と同じようなことを考えている人はこの世界にどれくらいいるのだろう、とふと知りたくなる。実際に行動に移す、移さない、の話ではなくて。目が覚めたら天気が最高で今日は働くのはよそう、と。地球が誕生してから人類がそんな気持ちに素直に従っていた時代が一瞬でもあったとしたらそれって素敵だよなって笑える人が一体どれくらいいるのだろうって。そんなことを私は、晴れた日の朝に想像して毎日の雑務をこなしていく。大真面目なことを大真面目にやらないって、結構難しいのだ。ずっと生きていくためのおまじない。
そういえばそういう心の色と似ているのだけど、最近料理をする時や歌を歌う時に心がけていることがあって。それは気持ちを込め過ぎないってことだ。丁寧に真摯に、でもライトな関係でいること。今までは相手のために、自分のためにと祈る気持ちが強ければ強い程良いと思っていた。だけどそうすると、料理も歌も「私のもの」以外を受け付けなくなってしまう。料理や歌は、それを食べる人聴く人の「人生の記憶」で、それが塗り替えられていくことほど素敵なものはない。だから余白があること、そして祈り過ぎないこと。
何かを強く願うということは、=叶っていない現実があると思っていることになる。だから、もう既にその願いは叶っていて、流れに任せます。くらいの「柔らかさ」が多分とても大切なんだと思う。
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家入 レオ
2022年2月にはデビュー10周年を記念して「10th Anniversary Live at 東京ガーデンシアター」を開催。
2023年2月には約4年ぶりとなるアルバム『Naked』をリリース。さらに、年内に2本のツアーが決定している。 ginzamagでのインタビュー: 家入レオが“Naked”な自分に原点回帰して気づいたセルフラブの大切さ「毒も見方次第で“あなたらしさ”になるから」 家入レオ、愛と憎しみの区別がつかなくなった「未完成」。
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