深夜の傑作ラブコメディ『生き残った6人によると』先週最終回を迎えた。ゾンビ・パンデミックから逃げ遅れた男女がショッピングモールに立てこもって始まった「共同生活」の結末は? ゲーム作家でライターの米光一成(『ぷよぷよ』『はぁって言うゲーム』『変顔マッチ』など)が考察する。 →レビュー前編はコチラ
『生き残った6人によると』にまた会いたい!エンタテインメントの力を信じて踊れ

最終回直前、メンバーがバラバラに
今期ドラマの深夜枠の隠れた傑作『生き残った6人によると』、2022年9月13日最終話が放送された。
huluで全6話を観ることができる。
原作は、山本和音のコミック『生き残った6人によると』。
ゾンビ・パンデミックから逃げ遅れた男女が、ショッピングモールに立て籠もり共同生活する。極限状況下ラブコメディかと思いきや、その枠に留まらない展開をみせた。
出演は、以下の通り。
桜田ひより/水上梨々役
佐野玲於(GENERATIONS from EXLIE TRIBE)/れんれん役
中村ゆりか/村濱雫役
倉悠貴/入江神役
髙石あかり/樫本ビースト役
八木アリサ/最上紗奈役
田中光輔/柏正太郎役
佐々木舞香(=LOVE)/明美役
大貫勇輔/平坂亮役
若手実力ぐん伸びメンバーをいかにそろえているかについては、最終章直前のレビューに書いたのでそちらを参照してください。
で、だ。
脱出した紗奈が、最終直前回で、モールに戻ってくる。だが、彼女の傷を見つけて、ゾンビに噛まれているのではないかという疑惑が沸き起こる。
そして、紗奈を守ろうとする雫と、ゾンビ化していたらそんなこと言っていられないと主張する梨々が対立。メンバーの仲がぎくしゃくしはじめる。
自称カリスマCEOだったリーダーれんれんの嘘も暴露されて、完全にメンバーは分断されてしまうのだった。
「誰かが紗奈さんを止めないと私達が全滅」してしまうので「私は罪人の役を引き受けます」と梨々は決意して、金属バットを持って、逃げる紗奈を追う。
ゾンビ化しつつある紗奈の後ろに、明美と監督の幻影が現れ、梨々の恋の話が明かされ、第1話で「よくこんな時にそんな恋なんでできますよね」と叫んでいた梨々の心情とつながった。
そして、最終回直前にして、メンバーがバラバラになってしまう。
いや、こんなバラバラのまま終わるわけはないと思いつつも、あと1回、最終回でどう収束するのかソワソワワクワクして見ていると、救出隊が明日来るというラジオニュースを聞いて「最後の夜」だとわかっても、みんなはバラバラだ。
エンタテインメントを心底信じている
ってところから、二宮健監督の剛腕がうなる。
ラジカセで爆音で音楽を流して、ビーストのダンス。入江くんも入る。
通りがかった梨々も、ビーストのダンスとウインクで、その輪に入る。
やって来た雫、梨々と見つめ合う。女同士、笑い合う。
ダンスシーンに挿入されるのは、平坂とれんれんのエピソード。
嘘をついたことが暴露されて自暴自棄になっていたれんれんに、おまえがカリスマCEOかどうかなんて関係ないと断言し、
「俺にとって大切なのはお前が俺にとってのアミーゴだっていうことだ」
と力説して、ひしと抱きしめる。
男ふたり全速力で走って、ダンスの輪に入る。
全員で踊る至福の場面。音楽は主題歌であり、6人の名が歌詞に織り込まれているFEMMの「THE SIX」。
理屈だけで押し通すのではなく、音楽とダンス、エンタテインメントが人と人をつなぐところを問答無用で見せつけた。
二宮健監督の強さは、エンタテインメントを心底信じているところだと思う。
「おれたちは決して家族じゃない。だけど、友達っていう言葉じゃどこか足りない。こんな特殊な状況で出会ったからこそ生まれたスペシャルな絆だ」
というれんれんの言葉こそが、『生き残った6人によると』が描きだした関係性だ。家族でも、友達でも、従来の恋愛でもない関係性。
恋愛コメディというフレームに限定されない、多彩な関係性を描き出した。
で、ハッピーエンドをむかえられるよう整えておきながら、ラストは、あんな展開をするし。さらに、ブラックなゾンビ・ジョークオチでしめるし。
最高にハッピーでブラックな極限状態コメディだった。また、こんなドラマを観たい。
監督・脚本: 二宮健
原作: 『生き残った6人によると』山本和音/KADOKAWA
出演: 桜田ひより、佐野玲於、中村ゆりか、倉悠貴、髙石あかり、八木アリサ、田中光輔、佐々木舞香、大貫勇輔
主題歌: FEMM『THE SIX』、LOONA「SICK LOVE Performed by LOONA ODD EYE CIRCLE⁺」
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Illustrator まつもとりえこ
イラストレーター。『朝日新聞telling,』『QJWeb』などでドラマ、バラエティなどテレビ番組のイラストレビューを執筆。趣味はお笑いライブに行くこと(年間100本ほど)。金沢市出身、東京在住。
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